hinode

一般向け情報

研究者向け情報

その他

National Institutes of Natural Sciences

太陽観測衛星「ひので」による太陽の新しい磁場生成機構の発見

2009年4月7日
自然科学研究機構 国立天文台
宇宙航空研究開発機構
米国航空宇宙局 (NASA)
英国科学技術会議 (STFC)
欧州宇宙機関 (ESA)


発表概要

 太陽表面には黒点に代表される強い磁場が存在しています。 太陽の磁場が、どのようなメカニズムで生成されるかはまだほとんど分かっておらず、 天文学の重要な研究テーマの一つとなっています。 また、太陽の磁場は、太陽フレアや地磁気擾乱を引き起こすなど、 我々の日常生活にも大きな影響を与えているため、 その研究は、この観点からも重要です。

 国立天文台を含む日米欧国際研究チームは、 太陽観測衛星「ひので」(注1)に搭載された可視光・磁場望遠鏡による観測から、 これまで知られていた磁場と異なる性質を持つ磁場(図A)を発見し、 「短寿命水平磁場」と名付けました。 これは以下のような、黒点の磁場とは全く異なる特徴をもちます。

  • 非常に微細。黒点の 30分の1から100分の1の大きさ (1000km)。
  • 短寿命。一般的な黒点の寿命が6日から2ヶ月程度なのに対して平均4分。
  • 磁場の方向が太陽表面に対して水平方向をむいている。 (黒点は、太陽内部から外部に伸びる垂直な磁場の断面に対応します。)
  • 太陽全面に大量に存在し、太陽表面を覆いつくしている。 (黒点は活動領域帯と呼ばれる、太陽中緯度から赤道付近にしか存在しません。)


図A: 左図:太陽の全面像。右図:太陽表面の拡大図。視野は太陽直径の約70分の1。 黄色部分が太陽表面に対して水平な磁場強度が強い所。

さらに、我々はこの短寿命水平磁場が太陽全面にわたって同じように出現し、 普遍的な性質を持っていることを発見しました。 これは、短寿命水平磁場の起源が、「ローカルダイナモ」と呼ばれる、 太陽表面付近での対流に起因する新しい磁場の生成機構(図B)であることを示唆しています。 (黒点は、太陽の差動回転によって太陽全体で磁場を引き伸ばすことにより生成されており、 その磁場生成機構はグローバルダイナモと呼ばれています。)


図B: 太陽表面の粒状斑と短寿命水平磁場の想像図。対流による上下動で磁場が曲げられ、 表面に浮かび上がったその一部が短寿命水平磁場として観測される。

また、この太陽全面に存在する短寿命水平磁場の総磁気エネルギーは非常に大きく、 彩層やコロナの加熱に必要なエネルギーに匹敵することも明らかとなりました。

これらの発見は、世界最高の解像度と安定した磁場観測精度をもつ「ひので」だからこそ為し得た成果です。

この研究で明らかになった短寿命水平磁場が持つエネルギーは、 太陽の全磁気エネルギーのかなりの部分を占めると考えられます。 研究チームでは、今回発見された短寿命水平磁場が、彩層(注2)や太陽コロナ(注3)の加熱、 また太陽風を加速するためのエネルギー源になっているのではないかと、 活発な研究を開始しています。

注記

注1
太陽観測衛星「ひので」(SOLAR-B)は、 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2006年にM-V ロケット7号機により打ち上げた科学衛星で、 「ひのとり」と「ようこう」に継ぐ日本で3番目の太陽観測用衛星です。 国立天文台は、搭載される3つの望遠鏡の開発や衛星全体の開発に、 宇宙航空研究開発機構と協力して取り組みました。 また、3つの望遠鏡の開発は、米英の関連研究機関・ 大学とも協力のもとで進められました。 「ひので」は、打ち上げから2年6ヶ月が経過し、 現在も順調に観測が行われています。 これまでに取得された高解像度の観測データは、 世界中の研究者により利用され、 2009年2月の段階で170編の査読論文が米サイエンス誌 を含む国際的な科学論文雑誌に出版されるなど、 目覚ましい成果をあげ続けています。
注2
彩層とは太陽の表層部分で、 光球の外側、コロナの内側に位置する層。 薄いガスによって形成される層で、厚さは数千から1万km、 温度は光球よりやや低く、絶対温度は4,700度から5,800度。
注3
コロナとは太陽の周りに見える自由電子の散乱光のこと。 太陽表面が絶対温度6,000度程度であるのに対しコロナは 100万度以上と非常に高温である。 高度500kmあたりから温度が上昇し始め、 高度2,000kmを境に絶対温度で1万度から100万度まで急激に上昇する。 どのような仕組みで温度が上昇し、 コロナが発生するのかは現在でも解明されていない。


発表資料

発表資料 (PDFファイル)

画像資料 (発表資料からの抜粋)

図1:ひのでが観測した太陽表面に存在する水平磁場

太陽表面の拡大図(左:カラー 図1-1、 右:モノクロ 図1-2)。
水平磁場強度の強い所が黄色(黒色)で示されている。

図2:ひのでが観測した短寿命水平磁場とその想像図(カラー)

太陽表面の拡大図(左)と太陽表面の粒状斑と短寿命水平磁場の想像図(右)。

図3:ひのでが観測した短寿命水平磁場とその想像図(モノクロ)

太陽表面の拡大図(左)と太陽表面の粒状斑と短寿命水平磁場の想像図(右)。

図4:太陽の大きさとひのでが観測した太陽表面に存在する水平磁場

太陽全面像(左)と、太陽表面の拡大図(右)。
水平磁場強度の強い所が黄色で示されている。

図5:太陽表面付近の粒状斑と短寿命水平磁場の想像図(カラー)

図6:太陽表面付近の粒状斑と短寿命水平磁場の想像図(モノクロ)

図7:太陽全面像とひのでが観測した短寿命水平磁場とその想像図

図8:黒点・短寿命水平磁場画像および太陽内部での磁場増幅の想像図

当ページの画像、映像について
  • 個人のご利用はご自由にできます。
  • 学校その他の教育機関における授業や試験問題へのご利用、天文学の広報普及活動を目的とするご利用は、ご自由に行えます。お使いになる際は、 『国立天文台/JAXA 提供』の記載を御願いします。
  • 新聞社、テレビ局などの報道機関による報道資料としてのご利用は、『国立天文台/JAXA 提供』のクレジットの明記をお願いします。なお、掲載記事の PDF ファイル(もしくはウェブの場合はURL、テレビの場合は番組名、放映時間など)を事後でも結構ですので御連絡いただけると幸いです。連絡は press (at) hinode.nao.ac.jp ((at) は @に置き換えてください) にお願いします。

国立天文台ひので科学プロジェクト 2009.4.8