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世界初!太陽観測ロケット実験FOXSI-3、太陽コロナからの軟X線を集光撮像分光観測することに成功!!

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自然科学研究機構 国立天文台
東京大学Kavli IPMU
名古屋大学
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
東京理科大学

FOXSI-3打ち上げ・世界初の観測に成功!!

 2018年9月7日午前11時21分(アメリカ山岳部夏時間;日本時間では、2018年9月8日午前2時21分)、米国ニューメキシコ州ホワイトサンズの観測ロケット打ち上げ場にて、太陽観測ロケットFOXSI-3の打ち上げを行いました。FOXSI-3は、最高到達高度約300kmの弾道軌道で約15分間飛翔し、「活動領域」、「静穏領域」、「太陽の北極域」といったX線輝度の異なる3つの太陽コロナ領域を、約6分間観測しました。FOXSI-3搭載の観測機器は全て正常に動作し、世界初となる太陽コロナの軟X線・集光撮像分光観測(※1)に成功しました。観測データの解析は始まったばかりですが、合計数百万個以上の軟X線光子を検出しています。今後の科学成果にご期待下さい。

ロケットの前での集合写真.JPG

打ち上げ前のFOXSI-3チームの集合写真。FOXSI-3が搭載された観測ロケットの前で撮影。(© NASA, FOXSI-3 team)

FOXSI-3の概要と科学目的

 FOXSI (Focusing Optics X-ray Solar Imager) は太陽コロナが放つX線を集光撮像分光観測する日米共同のロケット実験で、今回のFOXSI-3が3回目の飛翔でした。FOXSI-3は、斜入射ミラーと検出器から成る望遠鏡を7本持ち、ミラーの数や検出器の種類を変えることで、広いエネルギー範囲のX線を観測することが出来ます。6本の望遠鏡は、硬X線域(主に4 keV〜20 keV(※2)の高エネルギー域)を観測するために日本のFOXSIチームが開発した焦点面検出器を搭載しています。これらの検出器は、FOXSIの過去2回の飛翔でも搭載されており、科学成果を出してきました。FOXSI-3で新たに採用されたのは、軟X線域(主に0.5 keV〜10 keVの低エネルギー域)の撮像分光観測を行うための裏面照射型CMOS検出器で、望遠鏡の1本に搭載されています。0.5keVからの太陽軟X線域における集光撮像分光観測は、FOXSI-3が世界初の試みです。これら7本の望遠鏡により、太陽コロナ中の超高温プラズマ(※3)や非熱的プラズマ(※4)について、詳細に調査することが可能となります。

 FOXSI-3の科学目的は、太陽コロナにおける高エネルギー現象(エネルギー解放、粒子加速、加熱など)の理解です。そのうちのひとつが、「ナノフレア」のコロナ加熱(※5)への寄与を調べることです。ナノフレアは、通常の太陽フレアの10億分の1程度の極めて小さなフレアですが、太陽コロナの加熱の担い手の有力な候補の1つであると考えられています。通常、コロナの温度は数百万度程度ですが、ナノフレアが起こると1000万度の高温のプラズマが生成されると考えられています。今後、得られたデータを詳細に解析し、1000万度の高温プラズマが太陽コロナ中に恒常的に存在するかを調べることで、ナノフレアのコロナ加熱への寄与に関する理解が進むと期待されます。またFOXSI-3は、太陽フレアにおける粒子加速(※4)の理解を目指した将来の衛星計画に向けた科学的・技術的実証実験でもあります。

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FOXSIの観測装置。7本の望遠鏡(左側)と7個の検出器(右側)から成る。(© FOXSI-3 team)

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7本のX線斜入射ミラー。(© FOXSI-3 team)

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7個の検出器。1個が軟X線観測用の検出器(12時の位置)で、他の6個が硬X線観測用の検出器。(© FOXSI-3 team)

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FOXSI-3のロゴ。きつね(fox)がマスコット。
(© FOXSI-3 team)

FOXSI-3に使われた最新技術

 FOXSI-3 では、日本で開発した最新技術が使われています。

裏面照射型CMOS検出器を用いた高速度軟X線カメラ

 太陽軟X線の光子計測(※6)による2次元撮像分光観測には、高速連続撮像が可能なカメラが必要になります。太陽コロナで起きているダイナミックな現象は寿命が短いので(数十秒〜数分間程度)、1回の露光と読み出しに1秒程度を要するCCDでは、スペクトルを作るために必要な数の光子を集めるのに時間がかかりすぎます(数時間程度)。そこで、国立天文台の成影典之助教、名古屋大学の石川真之介研究員らは、裏面照射型CMOS検出器を用いることで、1秒間に250枚の撮像が可能な高速度X線カメラを開発し、FOXSI-3で世界初となる太陽軟X線の撮像と分光の同時観測に挑戦しました。

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軟X線観測用の裏面照射型CMOS検出器。
(© FOXSI-3 team)

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CMOS検出器用のカメラエレキ。CMOS検出器から出てくる1秒間に約160MBという大量のデータを処理、保存する(緑色の基板)。(© FOXSI-3 team)

硬X線観測用のCdTe検出器

 太陽の観測には秒角レベルの空間分解能が必要です。しかし、これまでの硬X線観測用の検出器の解像度は受光面で数百μm(一般的な焦点距離の望遠鏡では数十秒角の空間分解能に相当)もあり、太陽観測には不十分でした。東京大学Kavli IPMUの高橋忠幸教授らは新たに60μmという世界最高の解像度を実現し、秒角レベルの空間分解能を持つ撮像と、硬X線域の分光を同時に達成しています。CdTe検出器は硬X線に対する感度が100%であり、高解像度化により太陽観測に新たな可能性をもたらしました。

3D金属プリンターを用いた迷光遮蔽構造体(プレ・コリメータ)

 FOXSIで用いる斜入射ミラーは、望遠鏡が向いている場所からの光だけでなく、そこから18分角以上離れた場所からの光も検出器に集めてしまいます。この不要な光(迷光)を除去するために、18分角に相当するアスペクト比1:190(=直径:高さ)の穴を多数持つ迷光遮蔽構造体を製作しました。このように高いアスペクト比をもつ構造体を機械加工で製作することは極めて困難であるため、国立天文台の成影典之助教らは、最新の技術である3D金属プリンターを用いて開発しました。

コリメーター.JPG

FOXSI-3の望遠鏡に搭載された迷光遮蔽構造体(プレ・コリメータ)。
(© FOXSI-3 team)

軟X線用の可視光遮光フィルター

 軟X線の観測には、太陽からの強烈な可視光を完全に遮光する一方、軟X線を十分に透過するフィルターが求められました。可視光を遮光するには金属を使えばよいのですが、厚すぎるとエネルギーの低い軟X線では十分に透過できません。つまり、150ナノメートルという極めて薄い厚みを持つ一方、微小な破れ(穴)もなく、均一な厚みを持つアルミ製のフィルターが求められました。加えて、ロケットの打ち上げの振動でも破れないという課題もクリアしなければなりません。名古屋大学の三石郁之助教らのグループはこの難易度の高いフィルターの開発に成功し、FOXSI-3の軟X線観測を成功させました。

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FOXSI-3の望遠鏡に搭載された可視光遮光フィルター(9時の方向)。
(© FOXSI-3 team)

◼︎Co-PI(軟X線装置)を務める成影助教のコメント:

 約10年前、先輩研究者との雑談のなかで「高速度カメラを使えば、明るい太陽コロナからの軟X線でも光子計測できるのではないか?」という話になりました。以来、このアイデアの実現を目指して研究・開発を進めてきました。当時は十分な技術がなかったのですが、裏面照射型CMOS検出器を始めとするテクノロジーの進歩によって、今回、ついにFOXSI-3 で実現することができました。わずか6分間の観測でしたが、これまでに誰も手にしたことがないデータを手にすることができ、打ち上げ後は興奮が収まりませんでした。データの解析は始まったばかりですが、貴重な科学成果が出せそうな予感がしています。興奮はまだまだ続きそうです。
 FOXSI-3の実現には、共同研究者、メーカー、事務など、様々な方々にご協力、ご支援を頂きました。ありがとうございました。


2018年9月9日 成影 典之

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ロケットの打ち上げ場にて (©NASA, FOXSI-3 team)


(※1)集光撮像分光観測

FOXSI-3は、X線を鏡によって集め、検出器によって撮像と分光を同時に行う。分光とは、光(ここではX線)をエネルギーごとに分けること。空間情報が得られる撮像と、エネルギー情報が得られる分光を同時に行う撮像分光は、現象の物理情報を得る有効な手段である。FOXSI-3ではこの撮像分光を高速で行うことで、現象の時間変化も追うことができる(時間情報も取得できる)点が大きな特徴である。

(※2)keV
高エネルギー物理学で用いられるエネルギーの単位。電子に1Vの電圧を掛けた時に与えられるエネルギーが1eV。1keV はその1000倍で、約0.1602 × 10-15 Jに相当。

(※3)プラズマ
高温のために電子とイオンの状態に分かれた状態のこと。

(※4)非熱的プラズマと粒子の加速
安定した状態(エネルギーの平衡状態)にあるプラスマは、その状態を温度で表現することができ、熱的プラズマと呼ばれる。しかし、急激に加速されたプラズマ粒子は、温度では表現することが出来ず、非熱的プラズマと呼ばれる。プラズマの温度や、非熱的プラズマの生成要因である粒子加速は、プラズマが出すX線を分光観測し、エネルギーごとの強度の分布(スペクトル)を取得することにより詳細に調べることができる。

(※5)コロナ加熱
太陽表面温度が6000度であるのに対し、上空のコロナの温度は数百万度である。太陽のエネルギーは太陽中心部で生み出されているので、中心部から離れたコロナの方が、表面よりも遥かに高温なのは非常に不思議なことである。コロナがどのようにして加熱されているかは、太陽物理学の重要な研究課題の一つである。

(※6)光子計測
高エネルギーの光(X線、ガンマ線など)に対する分光方法のひとつで、検出器により光子1個1個の持つエネルギーを計測すること。2次元検出器を用いれば撮像も行え、空間情報も同時に得ることができる。


[FOXSI-3 の共同研究機関]

国立天文台、東京大学Kavli IPMU、名古屋大学、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所、東京理科大学、ミネソタ大学、カリフォルニア大学バークレー校、アメリカ航空宇宙局 (NASA) ゴダード宇宙飛行センター、アメリカ航空宇宙局 (NASA) マーシャル宇宙飛行センター

[FOXSI についての関連リンク]

[謝辞]

 本研究は、JSPS科研費 JP18H03724(基盤研究(A)、研究代表者:成影典之), JP17H04832(若手研究(A)、研究代表者:石川真之介), JP16H02170(基盤研究(A)、研究代表者:高橋忠幸), JP16H03966(基盤研究(B)、研究代表者:渡辺伸), JP15H03647(基盤研究(B)、研究代表者:成影典之), JP24244021(基盤研究(A)、研究代表者:高橋忠幸), JP21540251(基盤研究(C)、研究代表者:成影典之), JP20244017(基盤研究(A)、研究代表者:高橋忠幸)の助成を受けたものです。(助成開始年度で降順に記載)

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