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Copy right: Hirohisa Hara: ( updated: 2021/10/20 )
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 Research
研究内容の紹介
 観測ロケットや科学衛星に搭載する観測装置の開発, またそれらから得られる観測データをもとに太陽の磁気活動現象を研究しています. 1991年に打ち上げられた 「ようこう」衛星では, X線観測より太陽コロナの加熱についての研究のほか, 太陽 全体に観測されるX線構造から太陽磁気周期についての研究を行いました.2006 年に打ち上げられた「ひので」衛星ではその提案時から関わり, 衛星やX線・極端紫外線領域の観測装置を開発に携わった後, 観測・データ解析を通して, 太陽コロナの形成過程や太陽フレアのエネルギー解放領域である磁気リコネクション領域の研究を行っています.現在は,これらの研究を大学院生や海外の共同研究者と共に進めながら, 次期太陽観測衛星SOLAR-C計画の立案にも携わっています.
ようこう衛星の軟X線観測で得られた太陽コロナ ( 強度は対数スケールで表示しています )
○太陽コロナの加熱に関する研究 コロナは星の外周部に広がる百万度の高温プラズマです. 太陽の場合では, 表面温度6000度から, どのようにしてこのような高温へと加熱されているかを理解するかが 一つの大きな研究課題です. 太陽コロナの研究は, 多くの星がコロナをもっていることや, この温度をもつ宇宙プラズマの加熱について理解するための基礎になります. 1940年頃にコロナから放射される輝線が高階電離したイオンに起因していることが 理解されてから, 表面よりも外側の温度が数百倍も高い状態になっている理由について, 現在にいたっても多くの研究者により精力的に観測的・理論的研究が進められている課題です. 最近のコロナの観測的研究の多くの進展は, 大気圏外からの飛翔体の 観測によるものに依っており, また理論的研究には大規模な計算機シミュレーションが大きな役割を果たすようになってきています.
 ひので衛星で観測されたコロナループ群 ( 強度は対数スケールで表示しています )
 私の太陽コロナの研究は, 約20年前に「ようこう」衛星(SOLAR-A衛星)の軟X線画像観測に関わるところから開始しています. 太陽黒点が現れるような磁場の強い領域(活動領域と呼んでいる領域)をX線で観測すると筋模様がたくさん観測されます. これは両端が太陽表面に根付いたアーチ状もしくはループ状をした高温プラズマで, 専門家はコロナループと呼んでいます. コロナが暗く惑星間空間に向かって開いた磁気構造になっているコロナホールと呼ばれる領域を除き, コロナの大部分は大小さまざまなコロナループという磁気プラズマの集合体です. 軟X線観測から修士論文でまず明らかにしたのは, 活動領域コロナの中心分には一般的に500万度の成分のコロナが存在するということです. それまで100万度から300万度の成分があることは知られていましたが, それらとは違う空間を占めて, より高温に加熱されている 領域があることが明らかになりました. 博士論文では, 「ようこう」衛星による観測で黒点数の多い太陽活動極大期から黒点が少なくなる極小期の間に変化する太陽コロナの特徴を明らかにしたほか, 乗鞍コロナ観測所 (2009年に60年の運用を経て閉所)での分光観測から, コロナ加熱機構の有力候補と考えられていたアルベン波による加熱では活動領域にあるコロナループに必要な加熱量を説明できないという主張をしました.
ひので衛星で分光観測した活動領域コロナ. 鉄の13階電離状態から放射される輝線による観測. (左上) 輝線強度(対数表示)
 (右上) ドップラーシフト (右下)輝線非熱幅
ひのでEISで観測されたフレアループ. ループ上空で 磁気リコネクションが発生していると考えられている.
 ひので衛星を開発後は, 自身が関わった分光観測装置による観測により, 活動領域コロナループの足下で輝度の小さい音速程度の高速上昇流の存在を検出しました. このような現象が観測されるコロナループでは, 加熱が間欠的でまた加熱領域がコロナループの足下に集中している必要があります. このような加熱現象がどのようにして発生するかについて, 研究を進めています. ○太陽フレアにおける磁気リコネクション領域の研究 太陽フレアは太陽面で発生する爆発現象であり, コロナに1000万度を超える高温プラズマや高エネルギー粒子が生成されて, 短時間(数分から数時間)にX線強度や電波強度が何桁も上昇します. 「ようこう」衛星の画像観測から, 太陽フレアの発生において, 向きの異なる磁場のつなぎ替え過程である「磁気リコネクション」過程が重要な役割をしていることが理解されました. これは, 磁場のエネルギーをプラズマの加熱・加速に短時間に転換するものとして太陽フレアを説明するために提案されたものです. この過程は, 地球磁気圏で観測されていますし, また宇宙プラズマ一般の磁気的な加熱野基本となりうるものとして重要な過程として考えられています. 私は磁気リコネクション過程で予想されている流速場構造や温度構造を, 「ひので」衛星に搭載されている分光装置EISを使って調べています. これまでの研究から、リコネクションにともなって発生する1000万度の高速のアウトフローや,その開始点に向かう100万度のインフローを分光観測して, それらの流速場の特徴を報告しました. また, それらのプラズマパラメータを調べることで,その周囲に衝撃波構造の存在を示唆する結果を得ることができました. 一般的な特徴を理解するための研究が進行中です.
○コロナに観測されるX線輝点から太陽のグローバルな活動を知る X線輝点は, 活動領域外(静穏領域)のコロナに軟X線で観測される, 小さいもので 直径3000km, 大きいもので40,000kmにおよぶ点状の明るい点です. 最近の画像 観測は解像度が上昇し, これらが複数の小さな磁気ループが関与していることが 分かってきています. この輝点は斜入射型X線望遠鏡の画像観測が開始された直後に発見され, 太陽表面で測定される磁場の極性の観測から, 表面対流運動の結果として異極の構造のコロナ中での衝突とそこでの磁気リコネクション過程によるプラズマ加熱を通して発生するものと理解されています. コロナまで延びる磁気構造はいたるところにありますので, これにより太陽面全体にわたって観測されていると考えられます. 約10年前にこの構造の発生数について大学院生と研究を行い, その数が太陽11年周期中でほとんど変動しないことを結論づけました. 黒点を発生させる太陽磁場の磁束量は約11年の周期で一桁程度変動しますので, X線輝点数が活動領域外の複数 構造の磁場が関与して発生することや, 太陽の11年周期中にその数がほとんど変動しないことから, 静穏領域の磁場は11年の磁気周期を生み出すダイナモ活動で作られる活動領域磁場とは起源が異なるのではないかと考えています. このX線輝点が太陽全体で観測されることから, 微小磁気構造であるX線輝点をトレーサーとして使い,太陽の自転速度や表面対流構造を調べる研究も行っています.
 コロナ輝点を使って得られた太陽自転速度 (青:南半球, 赤:北半球)
★装置開発等 地上観測用の装置の開発にも興味をもっていますが, 主として飛翔体(観測ロケットや科学衛星) に搭載する観測装置の開発を行っています. 2016年−現在: Solar-C_EUVST小型衛星計画の準備 2016年−現在: Sunrise-3大気球実験の観測装置SCIPの熱構造開発 2016年−2018年: CLASP2偏光較正装置の開発 2012年−2015年: SOLAR-C(中型)衛星計画の観測装置基礎開発 SOLAR-C衛星への搭載を目指して観測装置の基礎開発を進めました. 2011年−2013年: ■ ホログラフィック手法による球面凹面回折格子の開発 (溝密度 3000本/mm) 科学研究費補助金 基盤研究(B) 2011年度−2013年度 「水素ライマンα線による太陽彩層磁場観測のための分光装置用回折格子の開発」 研究代表者:原 弘久 CLASPロケット実験で使用される凹面回折格子の仕様を満たすものを国産で開発すること に成功しました. この中でCLASPロケット実験用の遠紫外線偏光光源の開発も進めています. 1999年−2006年: ■SOLAR-B衛星・観測装置開発(現在運用中の「ひので」衛星) ◎衛星レベルの汚染制御について担当しました。 この経験から多くの方からこの内容について相談を受け対応してきています. ◎極端紫外線撮像分光装置EIS(EUV Imaging Spectrometer)の開発において日本側の分担部分 を担当しました. 多くの研究成果を生み出しています. これが評価されて, 自然科学研究機構 から「第2回若手研究者賞」を頂きました. ◎X線望遠鏡のX線カメラのX線較正について, 試験装置を開発して較正試験を実施しました. ◎可視光望遠鏡の汚染制御を担当しました. 1998年−1999年: ■ 機械切り手法によるEUV領域高分散球面凹面回折格子の開発 (溝密度4800本/mm) ○原 弘久,, 渡邊鉄哉(国立天文台), 原田達男(元都立大), Davila, J. M., and Thomas, R. J (GSFC) によって高分散多層膜回折格子の開発を行いました. 宇宙科学研究所搭載機器基礎開発経費, 国立天文台台長留置金により支援されました. 報告書:原 弘久ほか, 「EUV領域高分散球面凹面回折格子の開発」 搭載機器基礎開発成果報告書Vol. 13, p.64, 2000年3月 1994年−1998年: ■ XDT (XUV Doppler Telescope) 開発(観測ロケット実験用) ◎面内一様性の高い多層膜反射鏡の開発, CCDカメラ開発、 可視光除去フィルター開発, 真空望遠鏡鏡筒などの開発を行いました.
ひのでX線カメラの較正試験 @国立天文台 ATC
ひので EIS @ JAXA内之浦宇宙センター
CLASP-1偏光分光装置 と偏光較正光源
観測ロケットS520による21nmコロナ観測
 提案中のSolar-C_EUVST衛星計画
Copy right: Hirohisa Hara: ( updated: 2021/10/20 )