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「ひので」の成果とその先を目指すカギ

 太陽観測衛星「ひので」は、2006年9月の打ち上げから10年以上にわたり太陽を観測し、

という太陽の謎の解明に挑んでいます。

 コロナの加熱には磁場が関与していることが分かっています。また、フレアのエネルギーの源も磁場です。そこで、「ひので」は、光球(太陽表面)の磁場を精密に測り、上記の謎に迫る多くの成果をあげてきました。例えば、以下のような成果です。

■短寿命水平磁場の発見
 黒点に強い磁場があることは昔から知られていますが、「ひので」は、黒点のない「静穏領域」にも磁場が存在することを発見しました。この磁場は太陽全面に存在するので、潜在的にはそのエネルギー量は膨大なものになり、コロナ加熱を賄える可能性があります。

新しく発見された静穏領域の短命磁場(黄色部分)((c)国立天文台/JAXA)

■フレアを起こすきっかけとなる磁場構造の特定
 「ひので」は、スーパーコンピュータによるシミュレーションとの協働により、ある特定の磁場構造がきっかけ(トリガ)となってフレアが起こることを見出しました。

フレアを起こすトリガとなる磁場構造(黄色丸印の所、白:N極、黒:S極)
((c)国立天文台/JAXA)

 この先、さらに上記の謎に迫るためには、光球からコロナまでを磁場により結合された一つのシステムとしてとらえることが重要です。

太陽大気の構造(太陽画像はNASA/SDO)

 しかし、彩層から上の磁場は「ひので」では測定できず、新たな測定手法の開発が必要です。特に重要なのが、光球とコロナの間に存在する大気層である彩層の磁場の情報です。「ひので」は彩層がダイナミックに活動している様子をとらえ、彩層の活動現象がコロナの加熱に重要な役割を果たしているのではないかと考えられるようになりました。そして、コロナの加熱の謎に迫るためには、彩層の磁場を測定することが不可欠であると考えられるようになりました。また、上述のとおり、「ひので」は、光球の精密磁場測定により、ある特定の磁場構造がきっかけとなってフレアが起こることを見出しました。今後、フレアのきっかけとなる磁場構造をより高い信頼性で検出するためには、彩層の磁場情報が不可欠です。そこで、我々は、彩層の磁場を測る新しい観測装置を開発し、観測ロケットや気球に載せて測定する取り組みを進めています。

 さらに、彩層の磁場がその上空のコロナにどのようにつながっているかを知ることも必要です。上空へ行くほど磁場は弱くなるのでコロナの磁場を直接測ることは容易ではありません。しかし、プラズマ(高温のため電子とイオンに分かれたガス)は磁力線に沿って動く性質があるので、コロナのプラズマを高い解像度で観測すれば、磁場の情報を得ることができます。次期太陽観測衛星SOLAR-C_EUVSTでは、彩層〜コロナから発せられる極端紫外線を高い空間、時間分解能で分光観測し、ガスの運動や温度の変化を微細なスケールでとらえます。