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2024年5月に連続発生したXフレア

2024年5月11日(土)夜から12日(日)明け方にかけて、日本各地でオーロラが観測されるという珍しい現象がありました。一連の現象は太陽表面で連続して発生した爆発現象「太陽フレア」に起因するものです。太陽は11年周期で活動しており、現在は極大期に向かって活発さを増しています。国立天文台 太陽観測科学プロジェクトでは、太陽観測衛星「ひので」、三鷹地上観測、野辺山強度偏波計などの観測施設で太陽を定常観測しています。今回は5月3日、5日、8日、11日に発生した4回のXクラスフレア(注 1)を観測することができました。

図1は、三鷹の太陽フレア望遠鏡が取得した2024年5月2日から11日の連続光全面像およびHα線画像から黒点群の部分を重ね合わせた画像です。自転とともに位置を変えつつ数日間で急速に発達しています。NOAA13663、13664はそれぞれ米国海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration:NOAA)が符合した活動領域番号です。

図2、図3はそれぞれ、5月5日と5月9日に太陽観測衛星「ひので」SOT望遠鏡が捉えた2つの黒点群です。(a)は私たちの目で見える可視光の画像、そして(b)は磁場の画像です。N極を白、S極を黒で表しています。黒点がひしめき合い、N極、S極が絡み合った複雑な磁場構造であることが分かります。図中の時刻は世界時(UT)表記です。(注 2)

図4は、太陽観測衛星「ひので」XRT望遠鏡が5月11日に発生したX5.8フレアをX線で捉えた映像です。周囲との明るさの差があまりにも大きいため、フレア部分が白く飛んでしまっています。

11日のX5.8フレアではモートン(Moreton)波も捉えることができました。フレアによる衝撃波が伝播し、彩層を上下に運動させる現象です。図5 は太陽フレア望遠鏡がとらえたHα線と、その画像を解析して得た速度場像を並べた映像です。赤が奥行方向、青が手前方向への運動を表します。矢印で示したように波が超高速で伝わっていきます。

図6は野辺山の強度偏波計が捉えた、5月11日の太陽電波強度の変化を表したグラフです。フレアはマイクロ波バースト(microwave burst)という強力な電磁波放出現象を伴うことがあり、広い周波数帯で観測されます。世界時1時10分のフレア発生直後から電波強度が急激に上昇しました。

このように私たちの観測では、複雑な磁場構造の形成と、どこでどのように巨大フレアが起こったのかを追跡し、その発生メカニズムに迫ることができます。ひいてはフレアの発生予測にも貢献することができると考えています。

連続光全面像とhaの合成

図1:三鷹の太陽フレア望遠鏡が取得した2024年5月2日から11日の連続光全面像およびHα線画像(抜粋、Xクラスフレアを起こした2領域の部分のみを合成)(c)NAOJ

図4:太陽観測衛星「ひので」XRT望遠鏡が撮影した、5月11日に発生したX5.8クラスフレアの様子(c)NAOJ/JAXA/MSU

図5:三鷹の太陽フレア望遠鏡がとらえた5月11日のX5.8クラスフレアに伴うモートン波 左がHα線、右が速度場像(青:手前方向、赤:奥行方向)を表しており、矢印が移動していく波の位置を示している。(c)NAOJ

野辺山強度偏波計のグラフ

図6:野辺山の強度偏波計が撮影した5月11日の電波強度グラフ。6つの異なる周波数帯を同時に観測している。世界時01時10分付近から数値が急上昇している。(c)NAOJ

用語解説

(注1)太陽フレアは観測されたX線の強さによってB<C<M<Xの順で4つにクラス分けされています。M1.0とX1.0では10倍の差があります。

(注2)世界時(UT)は本初子午線上の平均太陽時を用いた時刻系です。世界時0時は日本時9時に相当します。

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