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太陽観測衛星「ひので」は、2006年9月の打ち上げから10年以上にわたり太陽を観測し、太陽の謎の解明に挑んでいます。太陽の謎の主なものに、次の2つがあります。
(1) 6000度の太陽表面の上空にどうして100万度のコロナが存在できるのか?
(2) 爆発現象フレアは、いつ、どのようにして発生するのだろうか?
コロナの加熱には磁場が関与していることが分かっています。また、フレアのエネルギーの源も磁場です。上記の謎を解明するには、光球(太陽表面)からコロナまでを磁場により結合された一つのシステムとしてとらえることが重要です。光球の磁場は「ひので」が精密に測定していますが、彩層から上の磁場は「ひので」では測定できず、新たな測定手法の開発が必要です。
また、特に重要なのが、光球とコロナの間に存在する大気層である彩層の磁場の情報です。「ひので」は彩層がダイナミックに活動している様子をとらえ、彩層の活動現象がコロナの加熱に重要な役割を果たしているのではないかと考えられるようになりました。そして、コロナの加熱の謎に迫るためには、彩層の磁場を測定することが不可欠であると考えられるようになりました。また、「ひので」は、光球の精密磁場測定により、ある特定の磁場構造がきっかけとなってフレアが起こることを見出しました。今後、フレアのきっかけとなる磁場構造をより高い信頼性で検出するためには、彩層の磁場情報が不可欠です。
さらに、彩層の磁場がその上空のコロナにどのようにつながっているかを知ることも必要です。上空へ行くほど磁場は弱くなるのでコロナの磁場を直接測ることは容易ではありません。しかし、プラズマ(高温のため電子とイオンに分かれたガス)は磁力線に沿って動く性質があるので、コロナのプラズマを高い解像度で観測すれば、磁場の情報を得ることができます。
そこで、次期太陽観測衛星Solar-C_EUVSTでは、彩層の磁場の測定とコロナの高解像度観測が重点課題となっています。それにより、光球からコロナまでを磁場により結合された一つのシステムとしてとらえることが可能になります。
ここで、磁場の測定方法の話をしたいと思います。磁場があると「ゼーマン効果」によりスペクトル線が分裂および偏光します。スペクトル線の偏光を観測すると、弱い磁場まで測定することができます。「ひので」はゼーマン効果で生じる偏光を利用して光球の磁場を測定しています。
しかし、彩層の磁場は光球よりも弱く、ゼーマン効果で生じる偏光が非常に小さくなります。彩層上部では、ゼーマン効果で生じる偏光のみを用いて磁場を測ることは困難になります。そこで、ゼーマン効果に加えて、「量子論的ハンレ効果」により生じる偏光も利用します。ハンレ効果は近年、理論的・観測的研究が進み、彩層磁場の新しい測定手法として注目を集めています。
※偏光と磁場測定について、以下も参照ください。
http://hinode.nao.ac.jp/news/column/6clasp-clasp/
現在、SOLAR-Cプロジェクトでは、ゼーマン効果、ハンレ効果により生じる偏光を利用して、飛翔体により精度良く彩層磁場を測定する技術の開発、および実証実験を行っています。新しい観測装置を開発して、衛星に積む前に本当に観測できるか確かめるため、ロケットや気球に載せて実験するのです。それにより彩層の磁場を測る技術を確立し、Solar-C_EUVST衛星で彩層磁場の測定により太陽の謎を解明したいと考えています。
ゼーマン効果とハンレ効果 --> |
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