コラム

カナリア諸島太陽観測遠征記 2005/07/1-15

 国立天文台Solar-B推進室の勝川、北越、鹿野、JAXA/ISASの清水らは、7月1日から15日まで、カナリア諸島のラパルマ島とテネリフェ島にある太陽観測所から、太陽面の高空間分解同時観測に挑戦しました。これは、高空間分解地上観測データを用いて解析を行い、Solar-B打ち上げ後の研究に備えるものです。

 そもそもこの観測は、International Time Program(ITP)と呼ばれる、国際共同観測時間を用いたものです。カナリア諸島にある複数の望遠鏡で、同時に同一領域を観測し、大きな成果を得ようというものです。昨年、国立天文台の勝川、常田、清水ほか、とスペイン・カナリア諸島天体物理研究所(IAC)のMartinez Pilletらと観測プロポーザルを提出したところ、採択されて、12日間がこのITPに割り当てられ、今回の観測することとなりました。ITPについては、下記Webを参照下さい。

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ラ・パルマ島のスウェーデン太陽望遠鏡 
真っ青な空に注目!

 カナリア諸島は、大小約10以上の島からなり、テネリフェ島とラ・パルマ島に目的の太陽観測所があります。観測に利用した太陽望遠鏡は以下の通りです。

○テネリフェ島
ドイツ真空塔望遠鏡」(Vacuum Tower Telescope; VTT)
 - 口径70cm高さ40mの巨大反射望遠鏡
 - 可視・近赤外の偏光分光観測(Stokes polarimetry)を行って、光球や彩層の磁場を詳細に観測。
○ラ・パルマ島その1
「スウェーデン太陽望遠鏡」(Swedish Solar Telescope; SST)
 - 口径1mの巨大屈折望遠鏡(太陽観測望遠鏡では世界2位)
○ラ・パルマ島その2
「オランダオープン望遠鏡」(Dutch Open Telescope; DOT)
 - 口径45cmと小型ながらも、高い空間分解能観測が可能

 今回の観測では、黒点内やその周辺で起こるコロナの加熱や活動現象をターゲットとしました。特に、光球の微細な磁場構造や運動がコロナ加熱にどのような影響を与えているかをTRACE、SOHOの観測データと合わせて研究することが最大の目的です。最新のSOHO、TRACEのデータを見て、毎朝、観測ターゲットを決めていました。また活動領域ばかりでなく、静穏領域も1日だけ観測しました。

 現在太陽活動はどんどん極小期に近づいており、近頃は全く黒点が存在しない日もあります。幸いにして観測期間中は、多数の活動領域があったため、崩壊中の黒点や新しく出現した若い黒点など、いろいろなタイプの黒点を観測することができました。観測期間中、フレアも何度か発生しました。それでも最後の1日は適当な黒点が太陽面の中心近くに存在せず、やむを得ず、活動領域の残骸を観測しました。

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望遠鏡のふたを開けているところ     黒点を観測中。見事な微細構造が見えています。

 観測所の標高はどちらも2400mほどで、この季節は、必ず雲の上に観測所があって、毎日快晴です。大気の状態が安定しているときは、世界最高の高空間分解能観測が可能となります。ただし、大気の状態は刻一刻と変化し、悪いときには像がボケボケで、全く観測できないという日もありました。しかし、現地の人が言うには、こんなにシーイングが安定していることはまずなく、ラッキーだとのこと。 1日平均3時間の観測を行ない、全体で 30時間分ぐらいのデータが取れました。おかげでハードディスク数台分、計1テラバイトのデータを日本に持って帰ってくることができました。
 今後、今回のデータを解析し、光球、彩層で起こる微細な磁気活動や、コロナ活動との関係をスペインの研究者と共同で調べていく予定です。

 今回の観測で、確かに地上望遠鏡でも、恵まれた地理と最新の観測装置があれば、スナップショットではきれいな絵を撮ることは可能だということを実感しました。しかし、安定して連続した観測ができるのはせいぜい1-2時間です。Solar-Bでは、大気の状態に影響されずに24時間連続した観測が可能となります。やはりSolar-Bが待ち遠しいものがあります。

<余話その1>「遠い遠いカナリア諸島」

 カナリア諸島は遠い。うまく飛行機を乗り継いでも丸一日かかります。カナリア諸島スペイン領ということもあり、スペインのマドリッドを経由して行きますが、マドリッドまでの日本からの直行便はありません。ヨーロッパのどこかを経由しなくてはいけません。経由先は、フランクフルト(独)、パリ、アムステルダムと人によってさまざま。さらに、 カナリア諸島はスペインがあるイベリア半島から西に1840km離れた北大西洋上にあり、マドリッドとカナリア諸島のテネリフェまで飛行機でも3時間かかります。
 ちなみに時差は8時間(夏時間)でした。

<余談その2>「恵まれた地理環境」

 とにかく毎日快晴。日本で、太陽観測所のある乗鞍でも飛騨でもありえない観測環境です。しかし、晴天だからといって毎日観測するわけではありません。晴れてても、ちょっと大気の状態が今一つだと観測しません。空間分解能が1秒切るともう観測しません。あと、風向き、風速なども参考にしているようです。晴れてるのに、観測しないなんて、向こうの人はなんてぜいたく...。われわれはというと、観測領域の長い時間発展を追いたいので、多少シーイングが悪くても観測してデータをとります。 

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