本日の ひので 2006.10.21〜
2006年10月27日(金) @宇宙研相模原キャンパス
<ひので状態報告>
極端紫外線撮像分光装置(EIS)の2つのドアのうち一つが無事、展開された。
X線望遠鏡は、良好なX線画像を取得している。X線望遠鏡は焦点深度が比較的小さい ため、-70度Cに冷却されたCCDを機械的に前後させる極めてユニークな設計の焦点 調節機構を持っている。ベストフォーカス画像を得るため、焦点調節機構により、現 在10ミクロン単位でCCD位置を調整しており、日に日にX線画像の解像度が上がって いる。すでに、「ようこう」のX線画像をかなり凌いでいる。
2006年10月25日(水) @宇宙研相模原キャンパス
<SOTトップドア開けオペレーション>
9月23日の打ち上げから1ヶ月の間に、 姿勢制御系の最終チェックや観測機器立ち上げへの準備を行ってきました。 このページでお伝えしている通り、 これらの作業順調に進み、 とうとう3つの望遠鏡のドア開けを行う時期になりました。
ドア開けオペレーションの先頭を切って、 可視光磁場望遠鏡(SOT)のトップドア開けが行われました。 SOTのトップドアは「ひので」衛星に搭載された可動部品の中でもっとも大きいものであり、 その動きは衛星全体を揺らしてしまいます。 またSOTのトップドアが開くと太陽光が衛星内部に入ってきます。 太陽観測衛星なのだから、 太陽の光を取り込むことは当たり前といえば当たり前のことですが、 軌道上の太陽望遠鏡で史上最大の口径を持つSOTでは、 これによっていままで経験 したことのない大量の熱が衛星内部に入ってくるので、 設計通りにどこも異常な高温にならないか(どうか)心配でもあります。 なによりSOLAR-B推進室の面々にとっては、 ドアが開くか開かないかは、 いままで10年以上にわたる努力が露と消えるかどうかの瀬戸際ですので、 オペレーション前の緊張感にはすさまじいものがあります。
右の2枚の写真は、 トップドア開けオペレーション直前の運用室の様子です。 右が、 衛星にコマンドを送ったり衛星全体の様子をチェックする部屋です。 左側に腕組みをして交信を待つ、 運用を取仕切る"上位ビット"と呼ばれる役目についている常田教授や、 画面右側でディスプレイを見つめ、衛星全体の状態を監視する、 システム担当三菱電機・島田プロジェクトマネージャーが 写っています。 左が、 SOTの状態や衛星の姿勢を見張っている部屋の様子です。 写真では、SOT望遠鏡部開発の光学設計主要部分を担った、 天文台・末松助教授や一本助教授が望遠鏡部の温度や 状況をモニター越しに監視をする準備をしている様子が見受けられます。 写真ではわからないかもしれませんが、 独特の緊張感がみなぎっています (正直、写真を撮るのが場違いな気がしてきて、 仕事とはいえ、とても気まずかったです)。 今回のオペレーションでは、 ドアが本当に開いたかどうかドアについているスイッチで確認するほかに、 SOTのフィルターグラフとコリレーショントラッカーのカメラで画像をとり、 明るい画像が取れたかどうかでも確認することにしました。 ただし、SOTの ピントが合っていない可能性が大きいので、 白いだけの写真が撮れても、 その光の量が予想の値と正しければドア開け成功という基準にしていました。
日本時間10月25日午後5時半、 衛星が鹿児島上空に表れ交信を開始。 SOT取得されたの画像は、 ドア開け前なのでまだ真っ暗のままです。 その後、トップドア開けのコマンドが地上から送信されました。 SOTからの画像が明るくなりました。 それだけではなく、 地上の望遠鏡では、年間数日、 それも瞬間的にしか取れないような鮮明な太陽表面の画像が現れました。 左の写真は、その画像をみんなで覗いている様子です。 実は、天文台・勝川上級研究員が、 軌道上での望遠鏡の変形などを計算し、 数日前にピントの微調整を行っていました。 最初からすばらしい画像が取れたのは、彼の手柄ですね。 しかし、すでに述べたとおり、画像が取れただけでは成功ではありません。 この後、数回の衛星との交信により、ドア開けが確認され、 衛星内部の温度も問題ないことが確認されました。
さて、いくつかの画像が撮れ、 それも最初から目の覚めるような鮮明な画像だったので、 運用チーム・望遠鏡を開発したメーカーの面々を交えて、 ちょっとした画像お披露目会が開かれました。 右の写真がその様子です。 研究者の性でしょうか、早速議論が始まっています。 著者も、画像のすばらしさに感動し、 これでこの研究もあの研究もできるぞとわくわくしながら見ていました。 ただし、見ていた研究者はだれでも、 「この画像はSOTの性能を出し切った画像ではない。チューニングすれ ばもっと良くなる」と思いました。
これから、ピントの微調整を行いながら、いろいろな波長で太陽像を撮像して、 SOTの性能をぎりぎりまで高める作業が続きます。 ここ1〜2週間の間には、 皆さんにSOTの性能を出し切った絵を公開できると思いますので、 ご期待ください。
下条圭美(国立天文台 2006/10/27)
2006年10月26日(木) 早朝@宇宙研相模原キャンパス
今朝、鹿児島1パス目にNa D1(D線:*1) のフォーカススキャンを行い、 昨日決めたベストフォーカスからずれてないことを確認しました。 D線でも粒状斑が良く見えます。 2パス目ではフォーカスを微調整し、 コリレーショントラッカーのライブ画像100枚、 スペクトロポーラリメーターの48枚積分データをとりました。 昨夜、非可視時間に実施したのGバンド(*2)1時間ムービー観測ですが、 ESAスバルバード局(*3)でデータを下ろしたため、まだデータがやってきていません。 Gバンドムービーは半日遅れになるかもしれません。可視光磁場望遠鏡(SOT)は、 すべて正常です。
*1:ナトリウム原子が光を吸収したり放射したりする、特定の波長の光です。
*2:可視光の一部で、粒状半など光球表面が見やすい波長の光です。
*3:ESA(欧州宇宙機関)が管理している、北極圏の衛星と通信するためアンテナ局。
2006年10月25日(水) @宇宙研相模原キャンパス
排出作業がほぼ終了し、 10月25日夕方の衛星とのコンタクト時にトップドアの展開作業を行い、 正常に展開されました。 現在、最初の試験観測として、 ワイドバンドフィルターグラフによる可視光を含むいくつかの波長での画像と、 画像安定化装置であるコリレーショントラッカーで利用される画像の 取得が開始されています。
今後、望遠鏡の性能を発揮するために重要である望遠鏡内部の温度が 安定化する事と待ちつつ、焦点調整などの各種調整作業を進め、 望遠鏡の性能確認作業を慎重に実施します。 可視光磁場望遠鏡は、世界最大・最高性能の軌道太陽望遠鏡であり、今後 (1)0.2秒角の高い空間分解能での観測、 (2)磁場ベクトルの精密測定を 実施して行きます。
2006年10月24日(火) @宇宙研相模原キャンパス
2006年10月23日(月) @宇宙研相模原キャンパス
2006年10月21日(土) @宇宙研相模原キャンパス
極端紫外線撮像分光装置(EIS)のCCDカメラによりダーク画像を取得し正常動作を確 認した。
可視光磁場望遠鏡トップドア展開用の観測テーブルを走らせ、 問題ないことを確認した。これ で、ファーストライト時の予行演習は完了した。画像安定化のための可動鏡ピエゾ素 子に30Vの電圧を印加し、動作を確認した。スペクトロポーラリメーターの運転を継 続し、較正用ダークフレームの取得をしている。スペクトロポーラリメーターは、フ レームトランスファー型CCDを使用し、機械的シャッターをもたないため、望遠鏡の 主ドア明け前が、ダーク取得の唯一の機会である。
日曜日夕パスと月曜日朝パスは運用お休み。
9月23日よりこのコーナーに、随時「ひので」関係者の言葉を掲載します。この部 分は、国立天文台および宇宙航空研究開発機構の見解を表すものではありません。
週末は更新が遅れます。ご容赦ください。
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