開発経緯

写真で見るX線望遠鏡の開発・CCDカメラの開発

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 SOLAR-B搭載のX線望遠鏡(XRT)は、 ESA SOHOや NASA TRACE・SDO衛星に搭載の望遠 鏡が直入射望遠鏡(右図右)であるのに対して、観測できる温度範囲が広い斜入射X線望 遠鏡(右図左)です。SOLAR-B搭載のX線望遠鏡は、これまで打ち上げられた太陽観測のた めの斜入射X線望遠鏡としては、最も高い解像度(約1秒角)を実現しています。望遠 鏡の開発は国際協力で行われ、X線ミラーおよび鏡筒などはSAO・NASAが、X線CCDカメ ラとMDP(衛星全体の観測制御を行うミッションデータプロセッサー)内のXRT制御・ 自律機能(機上での画像データ解析による自動制御)は日本側(宇宙航空研究開発機 構と国立天文台)が開発を担当しています。X線CCDカメラは、米国側担当の鏡筒に取 り付けられるカメラ部と電気箱よりなり、カメラ部の組立て・各種動作試験・軟X 線ーXUVでの較正試験は、国立天文台先端技術センターの軟X線モノクロメーター・中 型真空チャンバー・クラス10クリーンルーム等の設備により行われました。ここで は、X線CCDカメラの開発を写真でつづります。
(写真をクリックすると大きな画像が表示されます。)

『構造モデル/熱モデル検証フェーズ』

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CCD検出器(2000年11月): 英国のE2V社製CCDで、大きさ約3cmx3cmの4万画素。 -40℃〜-90℃に冷却するので熱膨張率の小さい金属Invarに収納されている。 (但し、写真は見本品)

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X線カメラの中のCCD(2001年2月): 焦点調整のために、CCDは板バネで吊るされる。 本来は手前に初段アンプが格納されるが、写真は構造熱モデルで、 質量だけが合ったダミー品。

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X線カメラの振動衝撃試験(2001年2月): 打上げ時にかかる振動と衝撃を掛けて 壊れないことを確認する試験。金色に見えるのがCCDを極低温に冷やす放熱板。 赤ケーブルの先に加速度センサーが付いており、各部の振動をモニターし合否 判断する。この試験は宇宙科学研究本部 振動試験装置にて実施。

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X線望遠鏡の熱真空試験(2002年1〜2月): X線望遠鏡は直径50cm・長さ3mの円筒形 をしている。X線カメラは国立天文台と宇宙科学研究本部が共同して担当したが、 鏡筒と鏡は米国のスミソニアン天文台が担当した。両者の構造熱モデルを米国にて 結合して、NASAゴダード宇宙航空センターにて熱真空試験を実施した。表面は 黒色の断熱フィルム(MLI)で覆われており、一番左奥に線カメラが写っている。

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X線望遠鏡の振動衝撃試験(2002年3月): 熱真空試験後に、同じくNASAゴダード 宇宙航空センターで振動衝撃試験を実施した。手前側のがX線カメラ。

『X線カメラの開発と試験』

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X線カメラ較正試験装置(2000年7月): 国立天文台・先端技術センターに、 シュラウド付き真空装置(右)が設置された。X線モノクロメータ(左)も設置され、 X線カメラの感度較正試験の準備が整いつつある。

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CCD特性評価試験1(2002年6月): CCDの広帯域の特性評価を実施するために、 X線カメラ用PMエレキとPM-CCDを愛知県岡崎の分子科学研究所UVSOR施設に持込み、 量子効率の測定を実施した。CCDにホコリが付かないよう、天文台から小型 クリーンブースを持込んで試験した。右写真の中央右にある銀色の箱にCCDが 入っており、循環型冷却装置にて-30℃まで冷却されてた。

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プロトモデルX線カメラの感度較正試験(2003年4月): 天文台に2000年に完備された、 較正試験装置にてプロトモデルX線カメラの試験が開始された。

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プロトモデルX線カメラでの自動制御ソフト最終試験(2004年4-5月): X線望遠鏡 の観測を制御するMDPという機器には、XRT画像を軌道上で解析して観測を 最適化するシステムが組み込まれている。その試験を国立天文台にて実施した。 左写真奥の黒色ディスプレーに擬似太陽像を投影し、途中にあるレンズでCCD上に 結像させている。CCDは全体を恒温槽にて低温に冷やしながら試験を行った.。

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PM-CCDによる放射線耐久試験(2004年6月): 軌道上での放射線はCCDの性能を 徐々に悪化させていく。駒沢の都立産業技術研究所の、60Co照射施設にてその 影響を試験した。左写真手前の金属球に60Coの強い放射線源が収められており、 試験するCCDは奥の鉛ブロックの山の中ある。鉛ブロックは今回試験する CCD以外の部分を放射線から遮蔽するものであり、ブロック奥にはCCDが見えている( 右写真)。

『フライトモデル品の組立てと試験』

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フライトモデルX線カメラの感度較正試験(2003年5月): プロトモデルX線カメラ の感度較正試験で行った手順を、同じように繰り返す形で慎重にフライトカメラ の試験を実施した。

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フライトモデルX線カメラの振動衝撃試験(2003年5月): フライト品の試験なので、 汚さないように"ルマロイ・シート"に完全に包んで試験を実施した。構造モデル と同じく宇宙研にて実施したが、ホコリを防ぐために、天文台からクリーンブース を運んで組み立てたので、大掛かりな試験となった。

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フライトモデルX線カメラの熱真空サイクル試験(2003年5月): 振動試験後にもう一度、 フライトカメラを天文台に戻し、熱真空サイクル試験を実施した。

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フライトモデルX線カメラの光漏れ試験(2005年7月): X線カメラは0度以下の温度で 使用されるが、隙間が生じて光が漏れこまないことを確認する試験を、国立天文台の 恒温槽にて実施した。フライトカメラには低温で結露しないように、ルマロイシート で包んだ中に乾燥窒素を流して試験した。

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フライトモデルX線カメラの完成!とアメリカへの出荷(2003年8月): X線カメラが完成し、 カメラ単体での環境試験 較正試験が完了した。米国が製作した望遠鏡部との組立てと、 X線望遠鏡としての試験を実施するために、X線カメラをアメリカへ出荷する。 汚染防止のために、気密容器にカメラを閉じ込め、ルマロイシートで2重包装し、 しっかりとしたコンテナに収納して発送準備がOKとなった。

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フライトモデルX線望遠鏡の振動衝撃試験(2004年1月): 構造熱モデルの試験と同じく NASAゴダード宇宙航空センターにて実施した。フライト品の汚染防止のために"ルマ ロイ・シート"で完全防護されているが、手前が開口部で奥がX線カメラである。

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フライトモデルX線望遠鏡の熱真空試験(2004年1月): 広いテーブル上に X線望遠鏡が設置されており、全てを飲み込むほど巨大なNASAゴダード宇宙航空 センターの真空槽が、奥に口を開いている。右写真は、テーブルごとX線望遠鏡 を入れている作業。これから2週間、昼夜連続した熱真空試験がはじまる。

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フライトX線望遠鏡が初来日(2004年8月): 米国で実施したX線望遠鏡としての 各種環境試験が完了し、宇宙研で実施する一次噛合せ試験に参加するために、 フライトX線望遠鏡が成田に初来日した。

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フライトモデルX線望遠鏡のX線光学性能試験(2005年6月): 宇宙研で実施した 一次噛合せ試験のあと、一旦、米国に戻り最後に光学性能試験を NASAマーシャル宇宙航空センターで実施した。

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フライトモデルX線カメラエレキの最終環境試験(2005年5-6月): X線望遠鏡が米国 で光学性能試験を行っている裏では、カメラ用フライトエレキの最終環境試験が 進められた。まず明星電気(株)にて振動衝撃試験を実施した(左写真)。その後、 国立天文台に移って、熱サイクル試験(中写真)と熱真空試験(右写真)を実施した。

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フライトモデルX線望遠鏡が再来日(2005年7月): X線望遠鏡としての全ての試験を 完了し、フライトモデルが再来日した。写真はJAXA宇宙科学研究本部に到着した ところ。

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フライトモデルSolar-Bの総合試験: これから以降は宇宙研での総合試験が続く。 (電気試験 2005年8月〜, 振動試験 2005年10月, 熱真空試験 2006年3-4月)。

国立天文台 SOLAR-B 推進室 鹿野 良平

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