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国立天文台公開講演会 「太陽研究最前線〜『ようこう』から『SOLAR-B』へ〜」レポート

 1月29日(日)、科学技術館サイエンスホールにて、国立天文台公開講演会が行われました。 講演会タイトルは、「太陽研究最前線〜『ようこう』から『SOLAR-B』へ」です。今年9月の太陽観測衛星Solar-Bの打ち上げを控えて、3名の講師が、以下のタイトルで太陽に関する話題を一般市民に提供しました。
Prof. Tsuneta's talk at open lecture

国立天文台

講演 「太陽研究最前線」
    桜井 隆(国立天文台副台長)
講演 「ようこうが解き明かした太陽活動の不思議」
    小杉健郎(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部教授)
講演 「次期太陽観測衛星SOLAR-Bへの期待」
    常田佐久(国立天文台Solar-B推進室長)

<講演要旨>

 桜井教授の講演では、まず、「太陽とはどんな星か」、太陽までの距離、大きさ、重さ、表面温度、明るさなどの物理量を身近な例を交えながら紹介しました。次に、黒点観測や日食観測などこれまでの太陽観測の方法に触れ、太陽研究の重要課題として、「太陽コロナ加熱」「太陽フレア爆発」「太陽活動の11年周期のメカニズム」があることを説明しました。
 小杉教授での講演では、1991年から2001年に活躍した太陽観測衛星「ようこう」の観測成果・研究成果について紹介しました。ようこうによって、太陽のダイナミックに変動する姿が明らかとなり、「太陽フレア爆発の磁気理コネクションの証拠」「コロナ加熱が太陽黒点数に大きく依存すること」「コロナ噴出現象の前兆」などが発見されたことを紹介しました。ようこうが、太陽研究の黄金時代を先導し、天文学と宇宙プラズマ物理学・実験室プラズマを結ぶ役割を果たしたことを紹介しました。
 常田教授の講演では、まず、宇宙空間観測の「とび道具」である、ロケット・気球による飛翔体観測について触れ、これらの技術が科学衛星に活用されていることを説明しました。飛翔体観測の難しさに触れ、Solar-B衛星の概要や3種類の観測装置について説明しました。Solar-Bが挑む研究課題として、「コロナはなぜ高温か?」「強い磁場はなぜ起きるのか?」「太陽定数の変動の原因?」をあげられました。講演の最後では、「国際協力で最高性能の衛星をつくる」ということを強調していました。

 会場には300人以上の聴衆が参加し、国立天文台の公開講演会としては過去最高の参加者でした。 熱心にメモを取る人も多く、中には講演をテープ録音している人もいました。これはひとえに、一般市民の太陽という天体への関心と同時に、Solar-B衛星への期待が伺わせました。
 講演後の各講師への質疑応答も活発に行われ、太陽物理学に関わる質問から、太陽とわれわれの生活に関わるものまで、多岐にわたってました。以下は、参加者から出た質問の抜粋です。

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国立天文台

<質疑応答・抜粋>
Q.太陽内部の元素の割合はなぜわかったのですか?
A.太陽大気の分光観測を行って、各元素固有のスペクトル(吸収線)の強さから求めました。

Q.天文学における太陽観測にかけるウエイトの割合はどれくらいですか
A.国立天文台での予算規模ではひと声1割ぐらいです。太陽観測衛星がSolar-Bで3機目ということから、宇宙科学にしめる割合でも1割と言っていいです。

Q.生命を支えている太陽の関係についてコメント願います
A.太陽の明るさの変化と気候の変化には関係があることがわかっています。17世紀後半にはマウンダー極小期といって、黒点がほとんど現れない時期があり、世界のあちこちで異常気象が記録されています。太陽の長期変動は氷河期との関係も指摘されています。このように、地球は太陽の影響を常に受けています。

Q.黒点の磁場の正体は?
A.ダイナモ理論によって、磁場が生じていると考えられています。

Q.磁場望遠鏡のしくみは?
A.太陽可視光中の鉄のスペクトル線(5250.2A,6302.5Aなど)を分光器で取り出して、ゼーマン効果(※)による偏光観測で、磁場の強さを計測します。
(※ゼーマン効果...強い磁場によって、スペクトル線が偏光状態の異なった成分に分かれ、波長の異なる線に分離する効果。この分離の度合いが磁場の強さに比例する。)

Q.Solar-Bには電波望遠鏡を乗せて、野辺山の太陽電波望遠鏡(野辺山電波ヘリオグラフ)との干渉計システムでの観測は行わないのですか?
A.Solar-B打ち上げ後も、野辺山電波ヘリオグラフと太陽の同時観測を行う予定です。しかし、科学衛星に電波望遠鏡をのせても、干渉計システムでの観測は技術的に難しいです。

当ページの画像、映像のご利用については、こちらをご覧ください。当ページの画像、映像でクレジットが明記されていないもののクレジットは『国立天文台/JAXA』です。当ページ内の、クレジットが『国立天文台/JAXA』、『国立天文台/JAXA/MSU』および『国立天文台、JAXA、NASA/MSFC』である著作物については、国立天文台が単独で著作権を有する著作物の利用条件と同様とします。著作物のご利用にあたっては、クレジットの記載をお願いいたします。なお、報道機関、出版物におけるご利用の場合には、ご利用になった旨を事後でも結構ですのでご連絡いただけますと幸いです。ご連絡はsolar_helpdesk(at)ml.nao.ac.jp((at)は@に置き換えてください)にお願いいたします。

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