国立天文台Solar-Bサイエンスセンター発足 2005/9/4
Solar-Bサイエンスセンター(以下、サイエンスセンター)が発足しました。サイエンスセンターの目的は、2006年夏打ち上げ予定のSolar-B衛星の前処理済の観測データ及びその解析環境を提供することで、Solar-B衛星から得られる科学的成果を最大限に引き出すことです。
科学的成果を最大化するために、まずは研究者がデータを解析するための環境として、台内および来台者が、端末を利用して同時にデータ解析を行える計算機資源を天文台内に設置する予定です。またネットワーク越しの利用者にも対応できるような計算資源を提供する予定です。
Solar-Bが取得するデータの中には、データ解析に膨大な計算量を必要とするものがあります。ひとつは 可視光磁場望遠鏡(SOT)から得られた偏光・分光データからのベクトル磁場の計算、もうひとつは局所日震学による光球下の物理状態(温度・密度など)の可視化です。これらの処理に対応するため、当センターではPCクラスターを導入する予定です。PCクラスターは、既存のパソコンのコンポーネントを利用し、CPUの台数を増やすことで大規模な計算を分散処理でこなすシステムです。この計算機を用いて、日々SOTから得られるスペクトロポラリメーター(SP)の観測データからベクトル磁場のマップをパイプライン的に計算して公開します。
太陽は他の天体より近いため、ダイナミックな現象を空間的分解して見ることができます。特にSolar-Bで観測したデータは、今までにない分解能で安定した画像が取得できるので、取得された画像を動画にすれば、新たな現象の発見がなされたり、研究のヒントになると予想されます。当センターでは、取られた画像を MPEG2ムービーとして動画化して、研究者だけでなく一般の皆様に見てもらうようにWebで公開する予定です。また、MPEG2ムービーをDVD記録して利用可能とする予定です。
これらの解析環境は研究者に公開され、太陽物理のみならず、他の研究分野、例えば地球物理学や物理関連領域の研究者との共同研究を活発化するでしょう。
そのほかにも、計算機を設置する共同利用室には、大型ディスプレイで現在の衛星・観測の状況を表示し、外部の見学者が解析や運用が見学できるようにする予定です。
SOLAR-Bサイエンスセンターの今後の予定は以下の通りです。
1)今年度中にPCクラスターと共同利用の解析システム(第1次)を構築します。
2)ベクトル磁場マップの自動作成パイプラインを打ち上げまでに構築します。
3)データ検索・配布システムを宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共に共同開発します。
4)観測データをムービー化してDVDを利用して配布する実験を行います。
そのほか、サイエンスセンターの事業として、以下を行う予定です。詳細については、このWEB上で公開していきます。
1)可視光望遠鏡(SOT)較正データ検討・初期運用会議(チーム内会議)
平成18年2-3月に開催予定で、較正データの検討および初期運用について最終決定します。これは、チーム内会議ですが、SOLAR-Bと共同観測する地上観測関係者が出席します。2)SOLAR-Bデータ解析説明会(国内会議)
これまでSOLAR-Bに直接関わってこなかった方向けにデータ解析に必要な範囲での搭載装置の説明、データ解析ツールの準備状況などについての説明会を開催します。第1回目は、平成18年3月に開催予定で、シリーズで行います。太陽物理のみならず、地球物理など関連分野の方の参加を歓迎します。説明会の日程などは、年内に決定してこのWEBで公開します。3)SOLAR-Bサイエンスセンターセミナー
今後、定期的に開催します。テレビ会議システムにより中継を可能とします。
サイエンスセンターは、国立天文台SOLAR-B推進室を母体として、天文学データ解析計算センターおよびJAXA/ISAS PLAINセンターの支援を受けています。
SOLAR-Bサイエンスセンターは、宇宙天気予報の基礎研究・予報アルゴリズムの構築に貢献します。