研究成果

「ひので」の可視光・磁場望遠鏡のファーストライトと初期画像について

 「ひので」は日・米・英の国際協力で開発された3つの最先端の望遠鏡を使い、 約6000度の太陽表面(光球)から、 数100万度以上の外層大気(コロナ)までの領域で、 磁場・プラズマの温度・プラズマの流れ、の観測を高精度・高分解能で行い、 「太陽面爆発現象はなぜ起きるのか?」「コロナはなぜあんなに高温なのか?」 「磁場の起源は?」 などの謎の解明に大きな成果を上げることが期待されます。 このうち可視光・磁場望遠鏡は、 口径50cmのグレゴリー反射望遠鏡と焦点面観測装置 (複数の可視光波長で観測が可能なフィルター観測装置、偏光分光観測装置) からなり、 光球から彩層の領域で磁場・速度・大気構造を最大視野320秒角×160秒角、 空間分解能0.2-0.3秒角で精密観測し、 太陽活動の源である磁場の性質を明らかにします。

 「ひので」は打上げ以降数回の軌道修正を経て、 10月4日までに太陽同期極軌道(高度約680km)投入を完了し、 初期運用を予定通り順調に行ってきました。 可視光・磁場望遠鏡は10月14日にサイドドアを展開し、 不要の太陽光を排出する排熱窓を先に開けて、 光学系汚染防止ヒーターの運用により 望遠鏡内の放出ガスを排熱窓から排出するとともに、 観測装置の機能を確認完了した後、望遠鏡開口部のドップドア展開にいたりました。

sot_small 2.gif        PDFファイルが取得できます。ひので可視光望遠鏡のファーストライト

 画像は初期試験観測期間中に取得された画像の一部で、 広帯域フィルター観測装置での波長430.5nmの帯域 (Gバンドと呼ばれる、CH分子の吸収帯)で撮像されたものです。 高い解像度を発揮するため、視野は狭く、 この画像では太陽中心近くの四角で囲まれた領域にあたります。 この波長では太陽大気での吸収が大きいため、 光球と呼ばれる領域(われわれが外から見通せる大気の一番深い部分) のやや上層を見ることができること、 波長が短いために構造の温度変化に敏感でコントラストが高く、 またこれよりも長い波長に比べ解像度も高い特長があります。 特に太陽表面現象解明に有用な、 粒状斑と磁場構造の変化を同時に見ることができるのが利点です。

 この画像で全体に見える明暗模様は対流運動による粒状斑で、 2秒角(太陽面で約1500km)程度の大きさがあります。 まばらに存在する輝点は、黒点と同様に磁場が強い場所で、 一番小さいもので約0.2秒角(太陽面で150km)に相当します。 この輝点がはっきり見えることで、 可視光・磁場望遠鏡が期待通り高い解像度を発揮していることがわかります。 同じように磁場の強いの場所でも、大きな黒点は暗く、 小さいものは輝点として見えることは太陽物理の謎の一つです。 また、この磁場輝点が活動現象のエネルギー起源や、 磁場生成機構の謎を解明する鍵を握っていると考えられるため、 可視光・磁場望遠鏡が輝点を十分な解像度で撮像できたことは、 今後の磁場観測の開始にむけて、 大きな期待の持てる重要なステップとなりました。 今後、全ての観測波長での撮像観測、磁場や速度場の観測を開始し、 他の2つの望遠鏡と協調しながら、定常観測を行っていきます。

 なお、可視光・磁場望遠鏡の望遠鏡部は、国立天文台を中心として、 三菱電機株式会社(望遠鏡とりまとめ・主担当)のほか、 株式会社ジェネシア・キヤノン株式会社・ フランスSAGEM/REOSC・株式会社セック(SEC)・三菱スペースソフトウェア(MSS)・ 三共光学工業・岡本光学加工所の各社・ 国立天文台先端技術センター特殊蒸着ユニット、 およびJAXA宇宙科学研究本部により、 また焦点面観測装置は、 米国のLockheed Martin Solar and Astrophysics Laboratory(LMSAL) を中心としてHigh Altitude Observatory (HAO)・NASAに、 国立天文台・JAXA宇宙科学研究本部が協力して開発されました。 また、「ひので」の運用は、 観測装置開発に参加した日・米・英の研究機関に加え、 欧州宇宙機構(ESA)の国際協力により行われています。

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