開発状況

Solar-B可視光望遠鏡 回折限界性能達成!

Solar-B可視光望遠鏡チーム


 昨年11月より国立天文台・高度環境試験棟クリーンルームにてSolar-B衛星搭載の可視光望遠鏡フライトモデルの組立・光学調整を行ってきた。本年7月7日、望遠鏡光学性能の最終確認により、観測波長全域〔388-668nm(ナノメートル)〕で口径50cmの回折限界性能を満たしていることが確認された。

 可視光望遠鏡は、ULE軽量化主鏡及び副鏡からなるグレゴリアン反射望遠鏡を主体として、排熱鏡、2次絞り鏡といった熱設計上重要な視野絞りを内部にもち、観測装置に瞳径30mmでコリメート光を送る色消し・低温度感度のコリメートレンズ系、磁場観測を可能にする偏光変調装置、像安定化のための可動斜鏡システムを持つ複雑な光学システムである。
 今回の測定では、望遠鏡の上向き測定と下向き測定の平均により重力に起因する変形の効果を打消し、無重力状態の最終的な望遠鏡波面誤差として18.2nm rms、波長500nmでのストレール比0.949(0.8以上が回折限界)という、口径50cm望遠鏡としては驚異的な光学性能に仕上がった。
 衛星の姿勢変動による像のぶれを補正する可動斜鏡システムの閉ループ制御試験も完了しており、1Hz以下で1/50、1Hzで1/10の抑圧特性を持つ。実験室環境における20Hz以下の制御帯域における像ぶれの残差は、太陽面角度に換算して0.001-0.002秒角(rms値)であり、優れた像安定化性能を持つことを確認している。
 7月末には、NASA担当焦点面装置が高度環境試験棟に搬入され、8月上旬より実太陽光による観測試験を行う。9月初めにはJAXAにおいてSOLAR-B衛星に組み込まれ、一次噛み合わせ試験が開始される。その後、打上げや軌道環境を模擬する過酷な試験が続き、2006年8月にJAXA M-Vロケットにより太陽同期極軌道に投入され、観測を開始する予定である。

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図の説明: 無重力状態の可視光望遠鏡の干渉計測定結果。ゼルニケ関数での波面フィッティング結果と焦点補正後の波面マップ。干渉計測定では行きと帰りの2回同じ光学系を測定するため、望遠鏡の性能としては図に出ている値の半分となる。軌道上で調節可能な焦点(ゼルニケA20項)を補正すると、波面誤差は0.0288λ rms (即ち18.2 nm rms)。非点収差(A22,B22)、コマ収差(A31,B31)、三角非点収差(A33,B33)などが非常に小さく、光学系支持構造・調整が完璧であることがわかる。

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