開発状況

Solar-B可視光望遠鏡回折限界達成に目処

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クリーンブース内で組立途中の可視光望遠鏡

 Solar-B搭載の可視光望遠鏡は、有効径50cmグレゴリー式の望遠鏡部とフィルター装置、分光器をもつ焦点面観測装置部からなる。望遠鏡部は日本で、観測装置部は米国で設計・製作が行われ、合わせて50cmの回折限界に近い光学性能達成を目指している。このたび望遠鏡部の機械・熱試験モデルが完成し(2002年4月)、打上げ環境に十分適合する事が実証された。望遠鏡機械・熱試験モデルは光学性能評価が可能なように、波面精度以外はフライト品と同等の光学部品を用いている。主鏡、副鏡は軽量化された低膨張ガラスULEである。コリメータレンズは2枚構成(フライト品は6枚構成)で、試験波長である632.8nmに最適化された設計である。像安定化の可動斜鏡はULE製で3本のピエゾ素子で支持される。望遠鏡主構体は超低膨張複合材料の接着一体トラス構造でできており、これはフライト品となるものである。望遠鏡部光学系は組立時の位置調整のみで、軌道上では像安定以外可動部がなく、焦点調節のみが観測装置部の再結像レンズで行われる。

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組立完了し、振動試験に運び出される可視光望遠鏡

 従って、回折限界達成のためには、光学系それぞれの波面精度が必要精度を満たし組立初期調節が誤差内で完全であることを前提に、位置変位が打上げの大きな振動・衝撃で許容内に収まっていること、軌道上での温度変化による変形・変位が許容内に収まっている必要がある。後者を実証する熱光学試験は2003年初頭を予定している。

 今回の機械・熱試験モデルでは主鏡、副鏡の面精度が悪い(波面で1λPV)ため回折限界性能そのものは確認できないが、まず、組立初期調整の課題である副鏡の横ずれ・傾きで発生するコマ収差の追い込み、及び光軸方向のずれによる焦点位置ずれの追い込みが問題なく行えることが確認できた。さらに、振動・衝撃試験を行い(表1)、前後の波面誤差変化を干渉計により計測した結果、懸案であった光学系の位置変化(デフォーカス、コマ収差)が十分小さく、目標の割当範囲に入っていること
が確認できた(表2)。これはフライトモデル作製に向けての画期的成果である。
一方、現モデルでは主鏡支持機構(側面3点で支持)起因と考えられる非点収差、
3角非点収差が大きく出ており、この軽減が回折限界達成のための新たな課題である。
このため、支持機構の改良モデルと主鏡と同じ構造をもつ球面鏡を用いて課題克服を
行っていく。

1.x、yz3軸で振動・衝撃試験を行った。ここには一番大きな加速度を与えたz軸の場合のみを示す

コンポー

ネント

  ランダム振動

  (z軸、3σ値)

   衝撃

 (z軸、最大値)

主鏡

24.9 Grms

45.5 G

副鏡

80.7 Grms

71.1 G

可動斜鏡

30.9 Grms

54.7 G

 

表2. 振動・衝撃試験前後の可視光望遠鏡干渉計波面測定結果

収差成分

振動試験前後の係数変化(波面、ダブルパス)

係数変化割当

デフォーカス係数

36.54 nmRMS

(副鏡光軸方向移動換算6.6μm)

±276.8nm

RMS

(±50μm)

コマ収差係数

4.3 nmRMS

5.6 nmRMS

高周波係数+測定誤差

4.75 nmRMS

5 nmRMS

非点収差係数

8.9 nmRMS

三角非点収差係数

4.4 nmRMS

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

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