開発状況

Solar-B X線望遠鏡の開発状況報告

鹿野良平、原 弘久、熊谷收可、澤 正樹、田村友範、常田佐久
(国立天文台)
坂尾太郎、松崎恵一(JAXA/宇宙研究本部)


1、はじめに
 2006年夏にJAXA/宇宙科学研究本部(以降、宇宙研)によって打上げ予定のSolar-B衛星の目的は、太陽光球面の詳細な磁場・速度場と、それに対応する上空の彩層・コロナの応答を同時に観測することで、太陽大気における電磁流体現象を多角的に理解することである。ここでコロナ観測を担うのがX線望遠鏡(XRT)である。XRTは、「ようこう」衛星搭載軟X線望遠鏡(SXT)と同じ斜入射光学系望遠鏡であるが、空間分解能を改善させ、より広い温度範囲の太陽コロナ・プラズマが観測できるように波長特性も改善させた望遠鏡である。開発は日米が共同して進めており、日本側の国立天文台・宇宙研がX線CCDカメラ開発をし、米国側のスミソニアン天文台・NASAが光学系を含めた鏡筒開発とXRT全体取りまとめを行っている。2003年度春に、日本側担当のX線CCDカメラのフライト品が完成した。その後の国内試験、および米国での試験についてここに報告する。


2、フライト-X線CCDカメラの国内試験
 2003年春、国立天文台開発実験センターのプロジェクト1室にてフライトCCDカメラの組立が行われた。組立に際しては、各部品の充分な事前ベーキングによる分子コンタミ管理と、クリーンルームによるダスト管理に留意した。
その後、5月3~10日に同室の中型真空槽にて、カメラとしての性能が出ているか、(a) CCDのX線~EUV光での量子効率測定(図1)と、(b) Fe55放射線源を用いたカメラゲイン測定を行った。そしてCCDが13~304Åの波長で46~93%の良好な量子効率を持つことが確認でき、波長依存性についても、補間のためのモデル計算式となんら矛盾のないデータであることが判った。
また、同じ中型真空槽にて、(c)熱サイクル試験も実施し、カメラの焦点調節機構部の機械的・熱的性能を検証した。打ち上げにおける耐機械環境性能については、宇宙研の振動試験装置を用いた(d) 振動・衝撃試験にて検証した。以上の試験すべてを終了した8月11日に、X線CCDカメラをスミソニアン天文台(SAO)に出荷した。

3、米国での結合試験およびXRT環境試験
 8~10月まで、スミソニアン天文台にて、鏡筒部とカメラ部の機械的・電気的結合試験を行い、最終的に1つのX線望遠鏡(XRT)が完成した。
11月にNASAゴダード宇宙航空センター(GSFC)に移動し、同センターの振動試験装置と熱真空チェンバーにおいて、XRTとしての機械的・熱的耐環境試験が2004年3月まで続けられている(図2)。
8月以降、国立天文台と宇宙研から多くの人員を米国に派遣し、X線カメラの開発担当として試験に参加した。

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図1、天文台でのX線量子効率測定準備風景:開発実験センター・中型真空槽にCCDカメラを設置したところ。

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図2、GSFCでのXRT熱真空試験風景:XRT(中央の黒色筒)を各種ヒーターパネルと共に試験パレットに設置し、パレットごと奥の熱真空チャンバーに運び込むところ。

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