開発状況

X線望遠鏡〜1秒角の角度分解能を確認 2005/06/5-13

 6月5日から13日、NASA/MSFCのXRCFにおいて、Solar-B衛星搭載のX線望遠鏡(XRT)の性能評価試験を行いました。この結果、X線望遠鏡の最も重要な角度分解能(解像度)の測定では、 1秒角を達成していることを確認しました。「ようこう」の角度分解能が3秒角ですので、「ようこう」よりはるかに鮮明なX線太陽画像が期待できます。

 NASA/MSFCは、アラバマ州ハンツビル市内にあり、XRCFはNASA/MSFCの施設です。XRCFには、巨大な真空チェンバーとX線を照射するための長いビームラインが備わっています。この真空チェンバーに観測機器を入れて、宇宙空間のような真空環境下において、要求された光学性能を達成しているかどうかを試験するのがこの施設での目的です。過去には、X線天文衛星チャンドラやGOES衛星のSXI望遠鏡の試験が行われました。
 今年の1-2月にXRTの鏡単体を真空チェンバーに入れて試験しましたが、今回の試験では、X線望遠鏡全体を真空チェンバーに入れて、熱環境を変えながら以下の項目をチェックしました。

  • XRTのX線及び可視光の光学特性のチェック
  • X線及び可視光の焦点位置、光軸の確認
  • フィルターの透過率の測定
  • XRTの角度分解能(解像度)の測定
  • 有効面積の確認
  • CCDのレスポンス
  • 視野に対する線形性 

 日本からは、坂尾(JAXA/ISAS)、熊谷、原、田村、矢治(以上、国立天文台)が今回の試験に参加しました。このほか、XRCFのスタッフ、SAOのスタッフらと分担して作業を行いました。日本側はCCDカメラの操作と画像データ取得を始め、 CCDカメラ各部の温度や、CCDカメラエレキを1気圧に保持する気密箱の圧力・温度のモニター及び記録を分担しました。日本側の作業は、1日3交代で実施され、上で示した項目を順次測定を進め、X線画像の取得し、測定の合間に取得データの解析を行いました。試験は順調に進み、当初18日まで行う予定でしたが、13日で終了しました。XRTは今後、総合試験のために、日本のJAXA宇宙科学研究本部まで輸送されます。

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X線望遠鏡を真空チェンバー内に格納している。チェンバーの入口側に、他の衛星の実験に使われた鏡が見えている
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X線望遠鏡を異なる角度から眺めた様子。
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アメリカ側のスタッフとモニターを前に打ち合わせ。 手前側の左から2番目が坂尾(JAXA)、左から3番目が原(国立天文台)。
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CCDカメラの操作及び画像データ取得作業中。 左手奥に、坂尾・原が座っている。

<余話その1>「きびしいセキュリティ」

 NASA/MSFCはいわゆる軍事施設の敷地内にあります。そのため、入構及び敷地内の行動は著しく制限されます。まず、敷地内に入るときは、必ずエスコート役の人といっしょに入らなければなりません。さらに、入構の際は、必ずパスポートのチェックを受けます。さらに、必要な場所以外に移動することを禁じられており、トイレに行くときも、エスコート役の人にひとこと断らなければいけません。そのほか、写真撮影禁止、外部へのインターネットアクセス禁止などがあります。


<余談その2>「スペース&ロケットセンター」

 NASA/MSFCには、ビジター向けの、スペース&ロケットセンターという 施設があります。もちろん、上で紹介した敷地の外にあります。ここには、 宇宙開発の歴史を紹介した博物館、全天周映画、屋外にはサターンロケットや スペースシャトルのレプリカなどが展示されています。ひととおり見学すると、 マーキュリー、アポロ、スペースシャトル、国際宇宙ステーションなど、 アメリカの宇宙開発の歴史がわかるようになっています。また、スペースキャンプ と呼ばれているツアーがあって、小学生のグループがセンターのスタッフに 連れられて、各展示の説明を受けていました。スペースキャンプには大人向けの ツアーもあります。

  • XRT...X-ray Telescope
  • NASA...National Aeronoutics and Space Administration
  • MSFC...Marshall Space Flight Center
  • XRCF...X-ray Calibration Facility
  • SAO...Smithsonian Astronomical Observatory
  • GOES...Geostationary Operational Environmental Satellites
  • SXI...Solar X-ray Imager

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