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巨大黒点の出現と、「ひので」がとらえた磁場構造

国立天文台 ひので科学プロジェクト
太陽観測所
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所


 2014年10月下旬、太陽に巨大黒点が出現しました。10月25日に開催されていた国立天文台「三鷹・星と宇宙の日」会場では、来場者の皆様と巨大黒点の話で大変盛り上がりました。この黒点は10月16日に端から現れ、発達しながら自転によって移動し、30日まで見えていました(図1、図2(a)参照)。黒点群全体の面積は10月26日に地球約66個分(※1)となり、これは今の活動周期最大であるとともに、約24年ぶり(1990年11月18日以来)の大きさでもあります。その後11月になって太陽の自転によって再び姿を現しました(図2(b))。

 図3と図4はそれぞれ、10月24日と11月15日に太陽観測衛星「ひので」が捉えたこの巨大黒点です。そして(a)の画像は、私達の目で見える光で見た画像、(b)の画像は磁場の画像で、N極を白、S極を黒で表しています。
 
 
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図1 国立天文台 太陽観測所のフレア望遠鏡が取得した2014年10月18日から28日の連続光全面像(抜粋、大黒点群の部分のみを重ねたもの)。(国立天文台)

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図2(a) 2014年10月24日に取得した国立天文台太陽観測所の太陽フレア望遠鏡による連続光画像。(国立天文台)


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図3(a) 10月24日の連続光画像
 (横:約20万km × 縦:約12万km)

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図3(b) 10月24日の磁場分布画像
 (横:約20万km × 縦:約12万km)

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図2(b) 2014年11月15日に取得した国立天文台太陽観測所の太陽フレア望遠鏡による連続光画像。(国立天文台)

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図4(a) 11月15日の連続光画像
 (横:約12万km × 縦:約12万km)

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図4(b) 11月15日の磁場分布画像
 (横:約12万km × 縦:約12万km)


 黒点は周りよりも温度が低いために黒く見えています。温度が低いのは、黒点で磁場が強いために、太陽中心部の熱が伝わりにくいことが原因です。そして、この磁場が、「フレア」と呼ばれる太陽大気中で起こる爆発の原因と考えられています。フレアの発生メカニズムを理解するため、「ひので」は太陽表面の磁場や時間変動を精密に測定しています。
 10月下旬、11月中旬とも、右側の黒点(先行黒点)がN極、左側の黒点(後行黒点)がS極です。11月の画像では、先行黒点の左端がS極、後行黒点の左端がN極に見えます。これはまだ黒点が太陽の端にあり、斜めから観測しているための見かけ上のものです。
 10月下旬の磁場の画像ではN極とS極が入り組んでいます。これはフレアを起こしやすい構造です。実際、10月下旬は巨大フレアが6回起こりました。11月15日・16日には中規模クラスのフレアが起こったものの、磁場の構造は10月ほど複雑ではないように見えます。今後、はたしてフレアは起こるのでしょうか。今後も注意深く観測を継続します。

 また、地球への影響はどうでしょうか。フレアが起こると、電気を帯びた粒子が地球にまで飛んできて、磁気嵐が起こる場合があります。10月下旬は多くのフレアが起こりましたが、地球への影響はあまりありませんでした。この理由は研究の対象で、まだ推測の域を出ません。一説には、黒点上空の磁場が強いためにプラズマの噴出を押さえ込んでしまったのではないかと考えられています。11月中、10月下旬ほど多くのフレアが起こらなかったとしても、上空の磁場が衰退して地球に影響を及ぼすフレアが起こる可能性はあります。今後の推移に注目が必要です。

(※1)黒点群をおおよそ真上から見たときの面積。

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