トピックス

「ひので」衛星が見た水星の太陽面通過

自然科学研究機構 国立天文台
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
アメリカ航空宇宙局


 日本時間の2016年5月9日夜から10日未明にかけて、水星の太陽面通過が起きました。これは、地球から見て水星が太陽の前を通り過ぎる現象です。残念ながら、日本の夜中の時間帯でしたので、日本からは見られませんでした。「ひので」衛星は地球上空の軌道上からこの現象を観測しました。「ひので」衛星が観測した画像、映像を公開します。



[更新情報]

2016年5月11日10:00 可視光・磁場望遠鏡による画像を公開
2016年5月11日13:30 X線望遠鏡、極端紫外線撮像分光装置による映像を公開

可視光・磁場望遠鏡で見た水星の太陽面通過


 可視光・磁場望遠鏡のスペクトロ・ポラリメータは、スリットを用いて観測するため、一回の露出で撮影できるのは、縦に細長い帯状の1次元のデータです。スリットの位置を少しずつ横にずらして撮影し、縦の帯を並べると2次元の画像ができます。ずらして撮影している間に水星が移動するので、この方法で作製した画像では水星は伸びた姿で写ることになります(注1)。

tom_rapidscan 3.png

       クレジット:国立天文台/JAXA

一方、スリットを固定して縦長の帯を適切な時間間隔で撮影し、横に並べると、水星は円形に写ります(注2)。

tom_sit_stare 2.png

       クレジット:国立天文台/JAXA

注1)
背景として写っている太陽の粒状斑は、形がひずまずに写っています。これは、ひとつひとつの粒状斑は、その直径くらいの範囲を撮影するのにかかる時間くらいでは形を変えないからです。それに対して、水星は大きさが大きく、移動速度が速いので、その直径の範囲を撮影する間に移動するため、横に伸びて写ります。

(注2)
背景に移り込む太陽の場所は時間が変わっても同じなので、背景は横線になります。ただし、完全な平行線ではなく線同士がくっついたり分かれたりしています。これは、粒状斑が生成したり消滅したりしているためです。

X線望遠鏡で見た水星の太陽面通過

クレジット:国立天文台/JAXA/モンタナ州立大学/SAO

 X線を放射するコロナは、太陽表面より宇宙空間に広がっているので、水星が太陽面にかかる前から、コロナからのX線を水星が遮断してシルエットとして見えています。

極端紫外線撮像分光装置で見た水星の太陽面通過

鉄の輝線(Fe XII: 195 Å)画像(クレジット:国立天文台/JAXA)

 第1接触前から水星が太陽コロナからの極端紫外線を遮断しているところが見えています。

解説:「ひので」から見る水星の太陽面通過

 地球上空を周回する「ひので」衛星から見ると、太陽に対する水星の移動の様子は地上で見るのとは異なります。「ひので」の軌道は高度約680 kmの太陽同期極軌道で、常に昼夜の境目を、1周回約98分で飛行しています。「ひので」はこの軌道上を移動しながら観測しているため、より近い水星とより遠い太陽との視差の違いが影響して、太陽面を通過していく水星の軌跡は右図のように波打って見えるのです。波打つ周期は「ひので」の1周回の時間約98分ですので、波打つ回数は、水星が太陽面を通過するのにかかる時間約7時間32分をこの周期で割って、およそ4.6回と算出できます。下図を見ると、確かに、水星は太陽面を通過する間に約4回半、波打っている様子がわかります。

Hinode2016MerTr_c 2.jpg

     予報計算:相馬充(国立天文台)

過去の観測

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