平成25-29年度 科学研究費補助金 基盤研究 (S)
「太陽コロナ・彩層加熱現象に迫る-ひので・IRIS・CLASPからSOLAR-Cへ」

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CLASP 活動状況

研究成果

CLASP 撮像装置により観測された彩層の速い時間変動とコロナループとの関係

CLASP に搭載されている撮像装置による、活動領域の速い時間変化についての観測成果が Astrophysical Journal 誌に掲載されました。

CLASP搭載の撮像装置では、活動領域の彩層を0.6秒という非常に高い時間分解能で観測しています。我々は撮像装置の高い時間分解能を生かすため、30秒以下で発生する速い時間変動のみに注目して解析を行い、大きな時間変動がどこで起きているかを調べました。その結果を、SDO衛星搭載のAIA検出器によるコロナループ画像と比較したところ、コロナループの足元で彩層の速い時間変化が大きいということがわかりました。これは、コロナループの加熱にこの速い時間変動が関わっている可能性を示唆する結果です。

次に、コロナループの温度と、ループ足元の彩層での速い時間変化を比較しました。AIA検出器の観測波長のうち80万度の温度に感度を持つ波長で観測された比較的低温のループと、200万度に感度を持つ波長で観測された比較的あたたかいループとを比較すると、どちらのループの足元でも彩層の速い時間変動に違いは見られませんでした。撮像装置で観測された速い時間変動によりコロナループが加熱されているとすると、温度の高いループの足元ほど時間変動が大きいことが予測されます。そのようなふるまいがみられなかったということは、少なくともコロナループの温度差を作り出すのにはこの現象は寄与していないということになります。ただし、この現象はループの加熱の一部、例えば80万度程度までループを加熱するのに寄与している重要な現象である可能性があります。

CLASP 搭載の撮像装置によって観測された速いスケールの時間変動のマップ(左、(c)国立天文台、JAXA、NASA/MSFC)と、SDO衛星のAIA検出器によるコロナループ画像(右、(c)NASA/SDO)。コロナループの足元で時間変動が大きいことがわかる。

[論文]
題目:"CLASP/SJ Observations of Rapid Time Variations in the Lyα Emission in a Solar Active Region"
著者:石川真之介(宇宙科学研究所)、久保雅仁、勝川行雄、鹿野良平、成影典之、石川遼子、坂東貴政(国立天文台)、A. Winebarger、K. Kobayashi(NASAマーシャル宇宙飛行センター)、J. Trujillo Bueno(カナリア天体物理学研究所)、F. Auchère(フランス宇宙天体物理学研究所)
掲載誌:The Astrophysical Journal, 846:127 (2017).

(2017/10/3)

CLASP偏光分光装置による研究成果をウェブ発表しました

 CLASP偏光分光装置による研究成果について、「ひらかれた太陽物理の新しい扉 ~真空紫外線による偏光分光観測~」というタイトルでウェブ発表を行いました。

 詳しくは、以下をご覧ください。
http://hinode.nao.ac.jp/news/results/post-42/
http://www.nao.ac.jp/news/science/2017/20170518-clasp.html

(2017/5/19)

CLASPによる研究成果をウェブ発表しました

CLASPによる研究成果について、「太陽のあちらこちらに現れる謎の超音速現象の発見―太陽観測ロケット実験CLASPによる5分間の観測成果―」というタイトルでウェブ発表を行いました。
 太陽観測ロケットCLASP(Chromospheric Lyman-Alpha SpectroPolarimeter)は、2015年9月3日に打ち上げられ、太陽彩層の詳細な観測を5分間にわたって行ないました。そのうち、太陽の2次元画像から、国立天文台久保雅仁助教を中心としたグループは、わずかに明るい構造が毎秒150km~350kmという超音速で伝播するという現象を発見しました。5分間という短い観測時間にもかかわらず、太陽のいたるところで、同じような現象がたくさん見つかりました。大気の影響のない状況で、既存装置の数倍の時間分解能(単位時間あたりに撮像する回数)と感度で観測することにより、これまでの観測装置では捉えられなかった、わずかな明るさの変動が伝わっていく様子を詳細に捉えることに成功しました。

 詳しくは、以下をご覧ください。 http://hinode.nao.ac.jp/news/results/clasp5/

(2017/1/23)

お知らせ

CLASPプロジェクトチームが国立天文台長賞を受賞!

CLASPの国際プロジェクトチームが平成28年度国立天文台長賞(研究教育部門)を受賞しました。国立天文台長賞は、国立天文台に所属する職員、または国立天文台職員を中心とするグループで、特に顕著な業績を成し遂げた者に与えられるものです。受賞の理由はCLASP実験の成功です。

 詳しくは、以下をご覧ください。 http://hinode.nao.ac.jp/news/notice/clasp-1/

(2017/3/7)

開発状況

[UVSOR #34] CLASP2 光源用偏光板&1/4波長板の軸出し
実験日程:2016年11月21日~11月23日
実験参加者:石川遼子、篠田一也、原弘久

モーターに取り付けられた偏光板。偏光板は透明なため、素子自体を確認するのは難しい。((c)国立天文台/JAXA)

CLASP2(CLASP再飛翔計画)では、偏光較正試験(観測装置の偏光特性を調べる試験)に用いる光源システムの開発も、観測装置本体の開発と並行して行っています。光源システムは、波長280 nmの直線偏光と円偏光を偏光分光器へ導入する必要があり、直線偏光を作り出すのが偏光板、直線偏光を円偏光へ変換するのが1/4波長板です。偏光板と1/4波長板は、真空用回転モーター(写真)に取り付け、その回転角度を調整することで、4種類(4方向)の直線偏光と2種類(右回り・左回り)の円偏光を作り出します。

高い精度の偏光較正試験を実現するためには、偏光板と1/4波長板の偏光主軸が、光源システムの機械軸に対してどこにあるかを精度良く調べておく必要があります(これを”軸出し”と呼んでいます)。その試験を、分子科学研究所・極端紫外光研究施設(UVSOR)で行いました。途中、必要な治具がないことが判明し、チームメンバーに急遽岡崎まで届けてもらうというハプニングもありましたが、要求を上回る精度で、偏光板と1/4波長板の軸出しを完了することができました。試験を終えた偏光板と1/4波長板は、CLASP2観測装置の偏光較正試験が開始されるその時を実験室で待っています。

(2017/2/6)

[UVSOR #34]金属鏡・高反射コーティングの評価
実験日程:2016年11月16日~11月18日
実験参加者:吉田正樹、石川遼子

測定した金属鏡サンプル。((c)国立天文台)

CLASP2(CLASP再飛翔計画)のスリット鏡として、金属鏡の中心部分に物理的な孔をあけることでスリット鏡とする案が候補にあがっています。CLASP2のスリットは、(1)7umという細いスリットをあけることができること、(2)スリットジョー光学系でライマンα線を観測するため、121.6 nmで高い反射率を持つ鏡面を実現すること、の2つが要求されます。今回の実験は(2)を確認するため、サンプルの金属鏡に対して高反射コーティングを施し、目的の反射率を得られるかを確認しました。

測定は、分子科学研究所・極端紫外光研究施設(UVSOR)で行いました。コーティングメーカーによると、ステンレス鏡に対してコーティングを行った経験はないということで複数の条件でコーティングを施したものを準備し、比較することにしました。いずれのサンプルもほとんど差はなく、要求性能を満たす反射率を持つことが確認できました。

(2017/2/6)

CLASP打ち上げを振り返って
成影典之

我々の7年間の努力が実を結び、CLASPは完璧なデータを届けてくれました。 打ち上げのカウントダウンが始まった時、我々は射場から約1.5km離れた、肉眼でもロケットが良く見える場所にいました。 5分前になると、関係者が少しずつ屋外に出てきて、みんなで打ち上げを見守ります。 カウントダウンが Zero となった瞬間、ロケットは閃光を放ち宇宙にむかって一直線に飛び立ちました。 数秒遅れて届く轟音の中、急いで屋内に戻り、データーが映し出されるモニターの前に向かいます。 緊張しながら待つこと70秒、望遠鏡のドアが開きモニターの画面が明るくなりました。 やがてロケットの姿勢が安定し、予想以上に美しい太陽が映し出されました。 その30秒後、偏光分光装置も正常に起動し、太陽ライマンα線偏光データが世界で初めてモニターに現れました。 この瞬間、緊張が一気にほぐれ喜びが込み上げてきました。 ロケットの飛行(姿勢)も非常に安定しており、 0.6秒毎に更新される画像は一切ブレがありませんでした。 全てが上手く機能した完璧な観測は、予定通り約5分で終了しました。 観測終了後は、仲間とハイタッチやハグをして喜びを分かち合いました。 詳細な解析はこれからですが、間違いなく太陽観測史に残るデータが取れたと確信しています。
(写真は、CLASP Tシャツと打ち上げに参加した方々(表が観測機器開発チーム、裏がロケット打ち上げチーム)の署名です。)

(2015/9/7)

CLASP打ち上げ!

米国ホワイトサンズにて現地時間9月3日11時1分(日本時間9月4日2時1分)にCLASPの打ち上げ、観測が実施されました。

詳しくは、以下をご覧ください。
http://hinode.nao.ac.jp/news/CLASP_Launch/

(2015/9/4)

CLASPとの共同観測に向け、地上望遠鏡の準備も進行中
報告者:勝川行雄

朝日に照らされたDunn Solar Telescope

CLASPによるライマンα線の観測とともに、同じ彩層を別の波長のスペクトル線でも観測すると、CLASPデータを使った彩層磁場の研究を進めて行く上で大きな強みになります。そのため、可視・近赤外線にある代表的な彩層線であるHα線(656 nm)やHe I線(1083 nm)をアメリカ国立太陽天文台(National Solar Observatory, NSO)サクラメントピーク観測所にあるDunn Solar Telescope(DST)にてCLASPと同時に観測します。観測所はCLASPが打ち上げられるホワイトサンズの隣の山の上(標高2800m)にあり、観測所からはホワイトサンズを見渡すことができます。共同観測班は8月28日に現地入りし、NSOのスタッフの方々の支援によって観測装置のセットアップはほぼ完了しました。肝心の天候ですが、午前中はすっきりと晴れ、昼ごろから雲が多くなるという毎日です。週間天気予報によると、これから徐々によくなっていくそうです。CLASPが打上げられる時に晴れるかどうか、日頃の行いが試されます。

観測所からホワイトサンズの眺め
(2015/8/31)

CLASP観測装置は、打上げに向けての全ての準備を完了しました。
報告者:鹿野良平

8月頭からホワイトサンズ・ロケット発射場で進めてきた、CLASPの打上げ準備ですが、先週水曜日(8月19日)に最大の山場である振動試験を行い、その後の1週間、観測装置の電気的機能や駆動機構そして光学性能に、打上げ時の振動が加わっても問題がないことを、検証してきました。2点ほど微修正が必要な箇所がありましたが、その修正も本日(8月26日)までに無事完了し、観測装置としては正に打上げOKの状態です。

CLASPの打上げとそれによる観測実施は、米国時間で9月3日(木)の予定です。そこまで、ロケットとの結合や、最終形態での打上げ予行演習など、まだいくつか作業が残っていますが、得られる観測データへの期待が大きく膨らみ始めています。

(2015/8/27)

CLASP観測装置がホワイトサンズに到着! 日米合同の射場試験が開始!
報告者:鹿野良平

7月31日(金)にCLASP観測装置が打上げ場に到着し、8月3日(月)から日米チームが合同しての試験が始まりました。打上げまで残り1ヵ月を切り、徐々に緊張が高まることと思います。

少し北には、その名の通り真っ白で地平線まで広がる砂丘の世界。観測を終えたロケットは、もう少し北の地に降りてきますが、観測ロケットを回収してはよりよい装置に発展させることができるのも、この広大な土地があってのことだと、あらためて実感するばかりです。

打上げ場に隣接するホワイトサンズ国定公園

(2015/8/7)

CLASP 米国へ出荷!

CLASPの観測装置が日本での評価試験をすべて終え、米国へ出荷されました。

緊張しながらも巧みにフォークリフトを操るのは、坂東研究技師(国立天文台)。CLASPの入った木箱を持ち上げて振動試験場から運び出し、精密機器を輸送する運送会社のトラックに無事積み込みました。出荷に立ち会ったメンバー達は、それぞれの思いを胸に、手を振ってCLASPを見送りました。CLASP計画日本側代表の鹿野助教(国立天文台)は、「一区切りついてホッとしているとともに、打ち上げに向け課題も残っているので、気を引き締めないと。」と話していました。

米国到着後は、NASAマーシャル宇宙飛行センターにて、フライトコンピュータを搭載しての噛合せ試験、そして夏にはニューメキシコ州・ホワイトサンズにあるロケット射場に輸送してロケットへの結合と最終試験を行い、今年9月予定の打ち上げに臨みます。

フォークリフトでCLASPを運ぶ坂東研究技師
CLASPをトラックに積み込むところ
手を振ってCLASPを見送るメンバー達
(2015/4/28)

振動試験
報告者:鹿野良平

写真2:回転波長板駆動エレキ"PMU-DRV"の振動試験風景(垂直加振)。
写真1:CLASP観測装置の振動試験風景(水平加振)。下方の膨らんでいる部分が フライト観測装置。

CLASPはロケットに搭載して太陽観測を行う観測装置ですが、打上時の振動に 耐えるか否かを検証する振動試験は重要な試験の一つです。そこで、米国への 装置出荷を目前に控えた2015年4月、JAXA宇宙科学研究所にてCLASP観測装置と回 転波長板駆動エレキ"PMU-DRV"の 振動試験を実施しました。

CLASP観測装置自体は長さ2.7m・重さ220kgですが、観測装置部に適切な振動レ ベルを加えるために、観測装置の先につくロケット側装置(姿勢制御系など)の 質量を模擬するマス・シミュレータをNASAから提供してもらい、全長6.3m・全重 量520kgの大きな供試体として振動試験を実施しました(写真1)。供試体根本に 貼った歪みゲージで全体の曲げモーメントをモニターしたり、低レベルの振動か ら段階的にレベルを上げていくなど、安全に配慮しつつ行いました。今回の試 験で構造に関するいくつかの課題が明らかになりましたが、ロケット発射場で行 う最終振動試験までに対応し打上げに臨みます。

一方、回転波長板駆動エレキ"PMU-DRV"に対する振動試験は、観測装置本体と 別に行い(写真2)、機械的構造のみならず電気的機能も問題ないことが検証で きました。

(2015/6/3)

NHKがCLASP観測装置の作業現場を取材
日程: 2015年 4月10日

精度のよい観測装置をつくるためには、埃と油分は大敵です。ですから、CLASP観測装置は、クリーンルームの中で組み立て、評価試験が行われてきました。そんな作業現場に、NHKのカメラが入りました。もちろん、撮影する方はクリーンウェアに身を包み、撮影用の機材はアルコールで拭いてから持ち込みます。クリーンウェアを着ての作業は慣れないと暑苦しいものですが、そんなことはものともせずに、重そうなカメラを操って、しっかり現場を撮影してくださいました。撮影時には、ちょうど、観測装置を覆うロケットの外筒を外して作業しており、観測装置の様子を撮影していただくことができました。

撮影された作業現場の様子は、石川遼子助教のインタビューとともに、4月22日朝9:00のNHKニュースで放送されました。また、下記のNHK「かぶん」ブログにも掲載されています。
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/215146.html

新たな発見のために必要な新しい観測装置を製作する現場の緊張感と、その目指す科学目標を、全国の皆様に向けて発信していただけたことを大変嬉しく思います。

※国立天文台でのこの装置製作はJAXA宇宙研との共同研究として進められました。

(2015/5/1)

偏光分光器の組み立て・光学調整
報告者:石川遼子

図2: 真空中での光学調整試験の際に、光学性能評価のために取得された試験用光源の波長プロファイル。重水素のライマンα輝線と軽水素のライマンα輝線が観測された。
図1: 真空中での光学調整の様子。CLASP偏光分光器は、真空容器としての役割も兼ねるロケットの外筒で覆われています。

CLASPの心臓部ともいえる偏光分光器。その役割は、望遠鏡で焦点を結ぶ光のうち、スリット部分を通過した光を分光するとともに、その偏光状態を観測することです。CLASPで観測するライマンα線は、真空紫外線領域にあります。この波長域にある光は、その名前が示す通り、容易に大気に吸収されてしまうため、観測には真空状態が必要不可欠です。そのため、目標の光学性能を持つように各光学素子を調整する一連の試験も真空状態で行わなければなりません。しかし、真空状態での試験は膨大な試験時間とコストを要します。そこで、光学調整手順を精査し、調整箇所を最小限にすること。さらに、ライマンα線で回折する方向と同じ方向に可視光で回折する回折格子を用いて、ほとんどの光学調整を大気中で行う。という工夫を施しました。

偏光分光器の光学調整は、その組み立てとともに少しずつ進んで行きます。2014年7月頃に各光学素子の組み立てが開始され、真空中での光学調整が完了したのは2015年の2月頭でした。このように長い期間ではありましたが、試験手順を事前に綿密に検討してきたおかげで、大きな問題もなく作業をすすめ、無事、目標の波長分解能を達成することができました。

(2015/6/5)

Slit-jaw光学系組み立て・アライメント
報告者:久保雅仁

Slit-jaw光学系で取得したLyα波長域でのスリット像(真ん中の黒い線がスリット)。
可視光を使って実施した単体での光学性能評価試験の様子

Slit-jaw光学系は、望遠鏡によってスリット周辺に作られた太陽像の2次元画像をLyα波長域で取得します。この画像は、ロケットの指向方向の選択や太陽彩層の空間構造の理解に使用されます。Slit-jaw光学系は、構造的には分光器部の一部です。与えられたお題は、「分光器部の組立に極力迷惑をかけずに組立を行うこと」でした。そのため、光学性能を担う鏡類をユニット化し、単体で光学性能を確認した後に、ユニットごとCLASP本体に取り付ければ、カメラの位置調整だけで性能が出るという方針を取りました。また、Lyα観測に重要な可視光の除去をLyαフィルタ部に集中させ、単体で簡易的に性能が評価できるようにしました。Lyαフィルタと光路長を合わせたガラス板も製作し、CLASP本体に取り付けた後に可視光で光学性能を評価し、試験時間の短縮・リスク軽減に努めました。試作品で問題点を洗い出したことも功を奏し、与えられた日数を守りつつ、要求以上の性能でCLASP本体に「納品」することができました。

(2015/6/3)

望遠鏡部の組立・調整
報告者:勝川行雄

望遠鏡部を分光器部とドッキング。「透明」な主鏡が見える。
CLASP望遠鏡部の干渉計測の様子。

CLASP望遠鏡部は口径27cmのカセグレン式反射望遠鏡です。主鏡と副鏡の2枚の鏡から構成される天文観測でよく使われるタイプの望遠鏡です。CLASPで一番大きい光学素子である直径30cmの主鏡を望遠鏡構造に設置する作業は、組立工程の中で最も緊張する作業の一つでした。安全にかつ精度よく主鏡を設置するため取付治具の改良やリハーサルを何度も行うことで望遠鏡は無事に組立られました。組立の後は光学性能出しのための調整です。CLASPの主鏡にはライマンα線のみを反射し可視光を透過する特殊なコーティングがほどこされています。そのため主鏡は見た目には透明です。しかし、口径27cmの望遠鏡の光学性能(いわゆる収差)を紫外線で精度よく測定することは大変難しいため、可視光をわずかでも反射してくれることが大切です。可視光レーザーを使った干渉計測で望遠鏡の収差を測定できるためです。スリットの位置からレーザー光を入れ、望遠鏡の開口に置いた平面鏡でレーザー光を折り返し、望遠鏡を通過した光の位相がそろっているかどうかを測定することで収差を求めることができます。さらに、望遠鏡を120°ずつ回して3回干渉計測しその平均をとることで重力による望遠鏡の変形を打ち消すことができます。干渉計測の結果をもとに副鏡の傾きを調整することで、ほぼ無収差の紫外線反射望遠鏡ができました。

(2015/6/3)

[UVSOR #24] CLASP 光学素子のコーティング評価試験
日程: 2014年 2月3日~2月8日
実験参加者: 久保雅仁、石川真之介、末松芳法、成影典之、木挽 俊彦

UVSOR #24
UVSOR#24の実験セットアップ。試験系の上流(写真上側)で直線偏光を作り出し、評価ミラーが無い場合の直接光と評価ミラーを任意の角度にした際の反射光の強度を測定して、反射率を求める。

分子科学研究所・極端紫外光研究施設(UVSOR)にて、①CALSPフライト品スリットのコーティング評価ミラーの反射率測定、②主鏡のテストコーティング評価ミラーの反射率の経年劣化測定、③テスト用平面回折格子の反射率の経年劣化測定を行いました。①の評価ミラーは、スリットを囲むように配置した状態で、スリットと同時にコーティングされたものです。観測波長の121.6nmで、要求値である75%以上の反射率を全ての評価ミラー(6枚)が達成しており、スリットが正しくコーティングされていることが確認できました。②に関しては、フライト品の主鏡へのコーティングは4月に行われますが、同じ種類のコーティングを施した評価ミラーの反射率を1年以上経過した状態で測定し、前回の測定と比べて若干の経年劣化はあるものの、問題になるレベルでは無いことが確認できました。また、テスト用平面回折格子(③)には、有意な経年劣化が無いことが確認できました。

(2014/7/4)

[UVSOR #23] CLASP 波長板軸出し実験報告
日程: 2014年 1月13日~1月18日
実験参加者: 石川真之介、 Gabriel Giono、 石川遼子、 成影典之、 鹿野良平

UVSOR #23
UVSOR での実験セットアップ。直線偏光させた UVSOR の Lyα ビームを用い、回転波長板による偏光モジュレーションを測定する。
報告者: 石川 真之介

分子科学研究所の極端紫外光研究施設(UVSOR)にて、CLASP フライト用波長板と波長板モーターの角度の関係を測定し、角度調整を行うことでモーターに対する波長板の軸の角度を確定させる実験を行いました。 CLASP が直線偏光の方向を正しく観測するためには、波長板モーターが CCD カメラに対して発する、撮像開始を指示する信号の送信タイミングに、波長板がある決まった角度にある必要があります。 角度調整の目標精度は、フォトンノイズにより生じる角度の不定性である0.8°からモーターの取り付け精度等の実験で制御できない要因を差し引いた0.2°でした。 UVSOR による Lyα 波長のビームから反射型偏光板で直線偏光ビームを作り出し、フライト用回転波長板により作り出した偏光モジュレーションと撮像信号を同時サンプリングすることで角度ずれを評価し、波長板の角度調整を行いました。 その結果、0.05°程度という、目標を十分上回る精度での角度調整に成功しました。

(2014/1/27)

ワークショップ報告

第5回CLASP特別講義開催!
石川遼子(国立天文台)

去る7月20日、CLASPチーム内外から15名の参加者を迎え、第5回CLASP特別講義が開催されました。

第5回CLASP特別講義

今回の特別講義のハイライトは2つ。1つ目が、後藤基志さん(核融合科学研究所)による、ハンレ効果で生じる偏光信号の解析解の導出です。これによって、数値計算で行っていた偏光度の評価が簡単にできるようになるため、データ解析の敷居がぐっと下がることが期待されます。 そしてもう1つが、私、石川遼子(国立天文台)による、ハンレ効果を確実に検出できる磁場強度や磁場形状についての報告です。 この検討から、①最適な観測ターゲットは太陽鉛直方向から傾いた比較的弱い(<50G)磁場強度を持つ領域、②磁場情報を得るには他観測機器との共同観測も欠かせない、という2点が明らかとなりました。 ターゲット選定には遷移層で想定される磁場形状や磁場強度の見積もりが必要であるということから、急遽、加藤成晃さん(国立天文台)に静穏領域の輻射磁気流体シミュレーション結果について講演していただき、 観測ターゲットの議論を行いました。

講義中、活発に質疑応答が行われ、ハンレ効果に対する関心の高さが伺えました。 また、急速に進んだ我々の検討結果に加え、観測ターゲットや他の観測機器との共同観測について白熱した議論がなされ、データ解析に向けて着々と準備が進んでいることが実感できる有意義な会となりました。

(2013/8/29)

リンク

出張報告

7th Solar Orbiter WS
参加者: 勝川 行雄
日程: 2017年4月3日~4月6日
場所: スペイン・グラナダ

7th Solar Orbiter WS

スペイン・グラナダで開催された7th Solar Orbiter Workshopに参加し、"Power of Space-Based Spectropolarimetry for Diagnostics of Magnetic Fields on the Solar Surface and Above"というタイトルで講演を行いました。「ひので」の偏光分光観測による光球磁場観測の成果から始まり、将来の彩層磁場観測を目指して進めているCLASPロケット実験の成果とSUNRISE気球実験による彩層磁場観測の紹介をしました。Solar OrbiterはESAとNASAが推進している太陽観測衛星で、太陽から0.3AUまで近づくのが特徴です。太陽表面とコロナを観測する多波長望遠鏡群と太陽風をその場観測する装置群を搭載し、太陽表面から太陽圏までのつながりを観測することができます。Solar Orbiterは2019年初頭に打ち上げ予定で、搭載される装置はようやく開発が完了するようです。長年かかった開発の苦労から開放され、どのような観測を行うのか現実味を持って考えられる高揚感のある会議でした。Solar Orbiterは軌道やデータ量による観測の制約も多く、「ひので」、「IRIS」や地上望遠鏡と共同観測を行うことで、成果を最大化する必要があります。今後、そのための連携が本格化していきます。

(2017/4/7)

SOLARNET IV meeting
参加者: 久保 雅仁
日程: 2017年1月16日~1月20日
場所: スペイン・カナリア諸島ランサローテ島

会場から撮影した夕焼け

SOLARNETプログラムには、欧州で計画されている口径4mの大型地上望遠鏡(EST)をサイエンス面で盛り上げつつ、若手の教育・育成を促進するという目的があり、欧州の若い研究者の方を中心に様々な研究成果が発表されていました。今回は4回目の研究会で、CLASPの口頭発表は、”Upcoming telescopes and instrument”というセッション内で行いました。先述のEST、米国の口径4mの地上望遠鏡計画DKIST、Solar Orbiter衛星、大型気球実験SUNRISEに続いて、招待講演を行うという機会に恵まれ、CLASPに対する注目度の高さを体感することができました。CLASPの初期成果の宣伝はもちろんですが、2016年12月にCLASPの提案書がNASAに受理されたばかりだったので、CLASP-2が本格的にスタートすることを宣言する良い機会となりました。また、CLASP slit-jaw光学系で得た初期成果をポスターで発表しました。私が筆頭著者である初期成果論文が、2016年12月1日にThe Astrophysical Journalから出版されたばかりの良いタイミングだったこともあり、欧米を中心とした研究者に向けて良い宣伝になりました。

カナリア諸島はヨーロッパにおける太陽地上観測の拠点です。今回が初めての訪問でしたが、残念なことに望遠鏡の無い島だったので、次はカナリア諸島の最先端の望遠鏡で観測をしたいものです。

(2017/4/4)

Solar Polarization Workshop 8 & CLASP2 science meeting
参加者: 石川 遼子
日程: 2016年9月12日~9月17日
場所: イタリア・フィレンチェ

アルチェトリ天文台(ビートルズのThe fool on the hillにもあるように、ガリレオが晩年幽閉されていたところ)で行なわれたCLASP2科学会合の集合写真。かの有名なフェルミもここで写真を撮ったらしい。

Solar Polarization Workshopは、偏光について理論・観測の両面から、とことん議論するマニアックな研究会である。ゼーマン効果に比べて複雑で、玄人好みの「散乱偏光・ハンレ効果」を検出しようというCLASPには、ぴったりの会議と言える。私が初めて参加したのは、6年前にハワイで行なわれたSolar Polarization Workshop 6で、まだ始まったばかりの(光学系も現在の一世代前のものであった)CLASPについて紹介した(Ishikawa et al. 2011, ASP Conference Series)。その次に、2013年中国・昆明で行なわれたSolar Polarization Workshop 7では、真空紫外線領域で0.1%の高い偏光精度を達成するための戦略(Ishikawa et. al., 2014, Solar Physics)について講演を行った。この会議では、CLASP全体(科学目標や開発状況報告)の講演を久保雅仁さんが行い、「次のSolar Polarization Workshopでは、CLASPのデータを携えて戻ってきます!」と力強く宣言した。これらを受けての、Solar Polarization Workshop 8である。

私の前に鹿野さんが全体を包括する内容を話してくれたこともあり、自身が進めてきた解析結果について、初めてじっくりと話す機会を得ることとなった。自分の発表後は、ハンレ効果の大家数人を捕まえて、議論をお願いし、色々な意見をいただいた。また、発表の内容は査読論文にもまとめている最中であり、この機会を使って共著者とも綿密に議論することができたことも大きな収穫であった。研究会では、スペインのグループを中心に、紫外線領域にあるスペクトル線での偏光に関する理論的発表が多く見られ、CLASP(紫外線領域の偏光分光観測)に対する期待の高さをひしひしと感じた。また、会議最後のJan Stenflo氏による(個人的な好みが反映された)サマリートークでは、CLASPのデータが紹介され、ライマンα線の偏光スペクトル線観測がとうとう実現されたこと(彼は、1980年代にソビエトの衛星で試みたものの失敗していた)、そして、紫外線領域の偏光分光観測への期待が述べられた。

Solar Polarization Workshop 8の次の日には、Workshopに参加していたCLASPチームメンバーを集めてCLASP2科学会合を開催した。スペインチームによる最新の科学検討や米国チームからのミッション進捗状況について報告があった後、日本チームより、これまで行ってきた基礎開発や、光学系・構造検討について報告した。さらに、米国チームと今後のスケジュールなどについて議論し、会議を終えた。

偏光にどっぶりと浸かった、とても濃密な一週間であった。フィレンチェの雰囲気も大変心地よかった。

(2017/2/6)

IRIS-6: The Chromosphere
参加者: 石川 遼子
日程: 2016年6月20日~6月23日
場所: スウェーデン・ストックホルム

IRIS衛星の研究成果報告が行われるIRISワークショップ6(すでに7は中国で開催済み)がストックホルム大学で開催された。私は、その会議で、CLASPの科学成果について、"The chromosphere and transition region as seen with CLASP"というタイトルで、招待講演を行った。IRIS衛星で得られた科学成果の報告が中心のワークショップのため、随分毛色が違うが、招待講演ということで割り切ることにした。が、偏光に関する質問はほとんど出ず、発表にもう少し工夫の必要があったのではと悔やまれる。とはいえ、散乱偏光には、大気モデルや輻射場の非等方性を理解することが必要不可欠であり、IRIS衛星で得られたデータを解釈するのと根本的には変わらない。CLASPのデータをレファレンスに、ライマンα線の輻射輸送計算を実施しているストックホルム大のSukhorkov氏と互いにデータや計算結果を見せ合いながら議論ができた。ちなみに、この時に彼と知り合いになっていたおかげで、バンケット会場となる船への行き方がわからず迷子になっていたところに出くわし、無事晩御飯にありつけた。

会議終了日の次の日が夏至ということで、滞在中は、ほとんど日が沈むことはなかった。そのため、時差ボケで途中起きてもいつも外が明るく、北欧に来たのが初めての私にとっては強烈な体験だった。

(2017/2/6)

Chromo AID 2016 workshop
参加者: 石川 遼子
日程: 2016年3月15日~3月18日
場所: アメリカ合衆国・コロラド州・ボルダー

講演の様子。

ALMA Cycle 4提案書の締め切りをひかえた2016年3月、彩層研究について議論するALMA-IRIS-DKIST合同ワークショップが開催された。私は、その前年に打ち上がった観測ロケット実験CLASPの初期成果について招待講演を依頼され、参加することにした。この研究会では、IRISで行われている彩層に関する最新研究成果の他、ALMAのScience Verificationデータの紹介やALMAでどのように彩層が見えるのか、そして、どのようなサイエンスができるのかの報告、そしてハワイに建設中のDKIST望遠鏡の開発状況などが議論され、多岐に亘る盛りだくさんの内容であった。中でも、ALMA観測にむけた各国の最新の検討状況を目の当たりにし、世界的な関心の高さを肌に感じることができたことは、特に有意義であった。

さて、自身の発表について述べるとする。CLASPは、ロケット実験や偏光ということで、やや他の講演とは毛色が異なることもあり、聴衆の興味を引きつけることができるか不安であった。が、CLASPの初期成果ということで、多くの人が聞いていてくれたように思う。講演終了後の質疑応答では、高高度研究所(会場のすぐ近くにある米国でも有数の研究所)の前所長Dr. KnolkerにCongratulations!と、お祝いの言葉をいただき、大変感動した。あまり自覚はなかったが、思いの外緊張していたらしく、前の人を押しのけて発表するという失態をさらしてしまったが(座長は気がついていたらしいが、私を動揺させると思い、そのまま発表させてくれた。むしろ私がいきなり出てきたことに聴衆がびっくりしていたらしい)。。。反応は上々で、その後も、休憩時間やディナーの時間を使い、チーム内外の研究者らと議論を行うことができた。

(2017/2/6)

出張者名: 石川 遼子
日程: 2015年11月15日~11月22日
場所: アメリカ・National Solar Observatory(ニューメキシコ州・サックピーク)& NASA/MSFC (アラバマ州・ハンツビル)

今回の渡航の目的は、
(1)Han Uitenbroek氏とCLASP観測データに関する議論を行う
(2)打ち上げ後、NASA/MSFCに保管されているCLASP観測装置の状態を確認する
(3)CLASP2計画について米国チームと調整する
の3つであった。

まず、第1の目的遂行のため、Han Uitenbroek氏のいるNational Solar Observatoryを訪ねた。渡航前に行った解析結果を元に、また、途中追解析をしながら、1日みっちりと議論した。自身の解析の鍵を握ると考えられる、Si III輝線(CLASPで偶然観測された)の形成高さに関して議論することが主目的であったが、散乱偏光に関する特徴的なパターンを発見しその起源についても議論が広がった。この特徴的なパターンは、後にまとめる査読論文の結論を得るのに、重要な役割を果たすことになる。

その次の日、慌ただしくも、ハンツビルへと向かった。今度は、CLASPの再飛翔計画(CLASP2)のための試験(目的(2))とその議論(目的(3))を行うためである。CLASP観測装置は、打ち上げ後まもなく回収され、その外観検査において大きな損傷はないことは確認され、その後、NASA/MSFCに輸送され保管されている。今回は、紫外線を望遠鏡部から導入し、装置全系での光学試験を行うことで、素子レベルで損傷がないかを確認する。久しぶりのCLASPに再会後、早速試験開始。モニターに映し出されたCCDカメラで得られた画像は、打ち上げ前で得られたスリット像と変わらず、一同歓喜の声をあげた。これにより、打ち上げ、着地いずれにおいても、各素子は損傷どころかズレることすらことなく、舞い戻ったことが明らかとなった。これにより、問題なく再飛翔計画に進むことができる。また、実験の合間をぬって、夏に提案書を提出していたCLASP再飛翔計画(CLASP2)について、開発・検討状況、大まかな実験計画、そして今後のスケジュールについて議論を行った。次にNASA/MSFCへ来るのは、CLASP観測装置を日本へ輸送するための準備を行う時であろう。

以上、移動の多い出張であったが、3つの目的を達成し、帰路につくことができた。

(2017/2/6)

The 3rd APSPM 2015
参加者: 石川 遼子
日程: 2015年11月3日~11月6日
場所: 韓国・ソウル

エクスカージョンで行った非武装地帯での集合写真。北朝鮮がすぐそこ、というところまで行くという大変貴重な経験をした。((c)KASI)

Hinode-9に続く、CLASP初期科学成果(というか速報?)の招待講演を、別件のため都合が悪く参加ができない鹿野良平PIの代打で行った。招待していただいたのは、韓国で行なわれたAPSPM (Asia-Pacific Solar Physics Meeting) ワークショップ2015で、その名が示す通り、アジア、環太平洋地域の太陽物理学者が集まる会議で、3回目を迎えたとのことである。今回のハイライトは、アメリカBig Bear観測所で運用が開始され、現在世界一の口径1.6mを持つNew Solar Telescopeの科学成果であった。この望遠鏡には、様々な観測装置が搭載されており、また、これらは、中国や韓国といったアメリカ以外の国も開発、提供していることも大きな特徴である。

自身の講演では、観測や装置の概要を述べた後、偏光プロファイルやその空間分布を中心に紹介した。質疑応答では、観測時間はたった5分しかないの!?というお決まりのものから、ロケットのポインティングをどうやって決めるのか?という質問、さらには太陽表面磁場との関係は何か見えているのか?という突っ込んだ質問まで、色々とやり取りがあった。

会議中、乾燥のためか、喉の調子が悪く、講演を行った次の日の朝には全く声が出ない状態に陥っていた。そのため、会議後半は、ほとんど議論ができなかったのが大変残念である。

(2017/2/6)

第13回 RHESSI ワークショップ
参加者: 石川 真之介
日程: 2014年4月1日~4月4日
場所: 北西スイス応用科学大学(スイス)

講演の様子。

第13回 RHESSI ワークショップにて CLASP の招待講演を依頼され、講演を行いました。 RHESSI ワークショップは2014年4月1日から4日にスイスのチューリッヒ近郊の街 ヴィンディッシュの北西スイス応用科学大学で開催され、 世界中から100人以上の高エネルギー太陽観測の研究者が集まりました。 会議の参加者の興味は主に太陽フレアにおける粒子加速や過熱現象ですが、 そのエネルギー源は磁場のエネルギーであることを強調し、 CLASP をはじめとする今後の太陽上層大気での磁場観測の重要性を説明しました。 講演は真空紫外線の偏光分光観測になじみがない参加者に向け、 原理や観測方法をわかりやすく紹介しました。 その結果、講演後に、大変わかりやすく興味深かったというコメントをもらう等、 真新しいアプローチとして CLASP をよくアピールできたと思います。

(2014/5/13)

Sub-arcsecond Observations and Interpretation of the Solar Chromosphere
参加者: 鹿野 良平
日程: 2014年1月27日~1月31日
場所: ISSI研究所(スイス・ベルン)

メンバー

研究機関・International Space Science Institute (ISSI)は、世界の研究者の交流から新たな発見を得るために、国際検討チームを公募し検討会合開催等の支援を行っています。2013年度に採択された課題「Sub-arcsecond Observations and Interpretation of the Solar Chromosphere」の第1回チーム会合が1月27~31日にISSIで開かれ、米欧の地上太陽観測所および日本の「ひので」衛星のメンバーの12名により、太陽彩層観測の現状とSOLAR-C衛星も含めた今後の展望について議論が行われました。私は今回ゲストとして観測ロケット実験CLASPについて講演を行いました。CLASPでの太陽彩層・遷移層起源の偏光度の精密測定は、それ自体が重要な結論となりうること、偏光から磁場情報を導出する際にある不定性を解くためにも、地上太陽観測所での微細彩層観測との共同観測が重要であること、CLASP実験の発展としては複数スペクトルの同時観測も検討に値することなど、重要な示唆を得ることができました。

(2014/7/4)

研究会「プラズマ分光と素過程研究の深化と展開」
参加者: 鹿野 良平
日程: 2014年1月15日~1月16日
場所: 核融合科学研究所(岐阜県・土岐市)

Kano's talk
図: 講演

核融合科学研究所で開かれた原子素過程研究会「プラズマ分光と素過程研究の深化と展開」に参加し、"太陽ライマンα線 偏光分光観測ロケット実験 CLASP"の講演を行いました。 50年の長い歴史を持つ本研究会は、主に実験室プラズマの研究分野で、プラズマ分光やそのデータベースに関連する原子過程や素過程を対象として、研究成果報告や相互情報交換する場として開催されています。 太陽大気という自然界プラズマをリモートセンシングするCLASPの講演は、本研究会の中では異色です。 そのため、いま太陽物理で取り組むべくサイエンス課題を「ひので」衛星の観測事例も含めて紹介してから、その流れの中でのCLASP計画の目的と意義を説明し、現在の観測装置開発や物理診断手法検討の状況を報告しました。 研究対象は異なるものの偏光分光という共通点があるので、CLASP観測装置が目指す挑戦的なほど高い偏光計測と、それが拓く物理について、高い関心と期待を持って頂けました。

(2014/1/22)

7th Solar Polarization Workshop
参加者: 久保 雅仁、後藤 基志、(石川遼子: 別経費)
日程:2013年9月9日~9月13日
場所:中国 昆明

2013年9月9日から9月13日に中国昆明で開催された7th Solar Polarization Workshop (SPW#7)に、久保、後藤、石川遼子(別経費による出張) が参加しました。 以下、本科研費で参加した久保、後藤の出張報告です。

図1:久保による講演


[報告: 久保]

2013年9月9日から9月13日に中国昆明で開催された7th Solar Polarization Workshop (SPW#7)に参加しました。 SPWは伝統的に偏光の専門家が集まり、CLASPやSOLAR-Cで重要となる散乱偏光やハンレ効果を用いた彩層・遷移層の磁場導出手法が、理論的・観測的観点から密に議論される稀な会合です。 議論の中心は、より現実的な散乱や放射の過程をどのように理論的に取り込み正確な偏光線輪郭を得るかというものでした。 これは、CLASPのScience meetingで正に議論されている内容であり、CLASPが正しい方向に進んでいることを認識することが出来ました。

私は、「A Sounding Rocket Experiment for the Chromospheric Lyman-Alpha Spectro-Polarimeter」というタイトルでCLASPの概要及び現状について口頭講演を行いました。 続く講演で、石川さんがCLASPの偏光較正の手法・疑似偏光管理の戦略について説明を行いました。 発表後に多くの方から好意的なコメントを頂きました。 特に、7回の会合に全て参加している重鎮の方々から「興味深いプロジェクトなので期待している」と言われました。 「3年後の次回会合ではCLASPの結果をお楽しみに」と話を締めくくったので、SPW#8には良い結果をもって大挙しておしかける必要があります。


[報告: 後藤]

9月9日から9月13日の日程で中国,昆明にて開催された7th Solar Polarization Workshopに参加し,ポスター発表を行いました. 発表タイトルは "Intuitive understanding of the Hanle effect" として,ほぼ7月の第5回CLASP特別講演の内容を紹介しました.受けた主なコメントは,輻射輸送の影響を考慮に入れないことの妥当性に関するものでした. それに対して,(1)そもそもライマンα線輻射場の非等方性は小さいため,それによる局所的なQ/IおよびU/Iの値も小さく,それらがさらに輻射場に与える影響も小さいため,結果として輻射輸送は今の場合重要ではないことと,(2)本研究の目的は,厳密な解を求めることではなくCLASPにおいて必要な精度で磁場ベクトルを求めることであり,そのためには今回の結果は十分に有用であることの2点を説明しました. 関連する講演として,3次元輻射輸送とPRD(partial redistribution)に基づく偏光伝搬の研究に関する報告があり,理論計算技術が進展しているという印象を持ちました.

図2:石川遼子による講演

石川遼子は「Precision VUV spectro-polarimetry for solar chromospheric magnetic field measurements」とのタイトルにて口頭講演を行いました。 実測・光線追跡検・偏光キャル等でしっかり偏光測定誤差をおさえ、0.1%の偏光精度を達成しようとする我々の取り組みをアピールし、質疑応答やその後のコーヒーブレイクでの議論から、参加している研究者のみなさんに興味を持っていただくことができました。

(2013/10/25)

後藤 基志
日程:2013年7月22日~7月25日
場所:High Altitude Observatory (USA)

図1:解析解とCasini のモデルで求めたハンレダイアグラムの比較の例.30 度ごとのχB について,磁場強度依存性を示す.強磁場の極限でずれが生じる.

7月22日から7月25日までの4日間,HAOに滞在し,Roberto Casini氏とハンレ効果のフォワードモデルについて議論を行いました。 目的は,ハンレ効果の解析解導出におけるいくつかの仮定および近似の正当性についてCasini 氏の意見を聞き,同氏が構築した計算モデルの結果との比較を行うことで,解析解を近似解として利用することの妥当性を確認することです。

1000G程度の強磁場中ではゼーマン効果のためずれが生じるが,それよりも十分に低い強度の磁場中であれば両計算結果からほぼ同一のハンレダイアグラムが得られることが確認されました(図1). 一方,両計算結果とも,Trujillo-Bueno らの結果と有意な磁場強度依存性の違いを示すため,その原因解明が必要であるが,いずれにせよ磁場強度依存性の違いは小さいため,解析解を近似解として利用することはすでに可能です。 このように今回のCasini氏との議論により,CLASPのためのフォワードモデルとして,出張者が導出した解析解は十分に有用であることが示されました。

(2013/8/29)