ひのでサイエンスコラム:03 黒点内部でうねるガス−半暗部−
太陽表面に現れる黒い点「黒点」。 ほとんどの黒点は、肉眼では見れないほど小さなものですが、 内部に日本列島がいくつも入ってしまうほどの大きさを持つものです。 黒点は、ひのでサイエンスコラム:02 「太陽表面の黒いしみ −黒点−」でもご紹介しましたが、 今回はひので衛星/可視光望遠鏡(SOT)を使って、 黒点の細かい構造を追ってみましょう。
黒点の半暗部(黒点中央の暗い部分を取り囲む少し明るい部分) は放射状の細い筋構造からなっています。この筋構造は、太さ300〜400km、 長さは5000〜7000km程度の大きさをもち、その内部には黒点の外側に向かって 毎秒5km程度で流れるガスの運動があることが知られています。 この流れは、発見者の名前にちなんでエバーシェッドフローと呼ばれています。 半暗部の中には必ずエバーシェッドフローが存在しますが、 その流れの原因はまだ分かっていない不思議な現象です。
三鷹キャンパスにある 新黒点観測望遠鏡 で見た太陽(2007/01/09)
画像の右側に2つの黒点が見える。(©国立天文台)
今までの地上からの観測では、太さ数百kmの筋構造は分解することができず、 なかなか流れを詳しく調べることができませんでしたが、 「ひので」衛星の可視光望遠鏡(SOT)はその優れた解像度により、 黒点半暗部とエバーシェッドフローの詳細な構造を見ることが出きるようになり ました。下の図は、上図に写っている同じ黒点をSOTで撮った黒点の図です。
- ムービー1:ひので衛星/可視光磁場望遠鏡が撮った黒点
- ムービー1:ひので衛星/可視光磁場望遠鏡が撮った半暗部拡大図
半暗部内部の運動がよく見える。
SOTの観測により、 エバーシェッドフローは黒点の中心側では明るい筋を、 外側では暗い筋を流れていて、 半暗部のほぼ水平な狭い磁力線に沿って音の速度に近い速度で流れる 激しい現象であることが分かりました。またこの流れは、 黒点の内側である暗部側の深いところから高温ガスが湧き出し、 黒点外側でガスが沈み込んでいることがが明らかになりました。 さらに、SOTにより半暗部の筋構造を細かく分解することができたため、 1つ1つの半暗部の筋構造がくるくると回転し 「捻れ」たような運動を示すことがみつかりました。 これは今まで分からなかった運動であり、新たな謎となっています。
一本 潔 (京都大学理学研究科付属天文台)
- ひのでによる関連研究論文
- Ichimoto,K., Suematsu,Y., Tsuneta,S., et al., 2007, Science, 1597
- Ichimoto,K., Shine,R.,A., Lites,B., Kubo,M., Shimizu,T., et al., 2007, PASJ,59, 593
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