平成25-29年度 科学研究費補助金 基盤研究 (S)
「太陽コロナ・彩層加熱現象に迫る-ひので・IRIS・CLASPからSOLAR-Cへ」

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SOLAR-C に搭載される3つの大型望遠鏡
ー 撮像観測から分光観測へ ー

これまでの衛星観測では、広域の情報を素早く取得できる撮像観測が大きな成果をもたらしてきました。 しかし、撮像観測だけでは手に入る物理情報に限界があります。 現象の背後にある物理過程に踏み込むためには、太陽大気が放射するスペクトルを分光観測によって精度良く測定し、温度・速度・磁場などの基本的な物理情報を取得することが重要です。

SOLAR-C衛星では光球からコロナまで温度の切れ間のない観測を行うため、波長別に3台の望遠鏡を搭載します。


Solar UV-Visible-IR Telescope (SUVIT)
光学磁場診断望遠鏡

SUVITはゼーマン効果に加えハンレ効果を利用して、光球より弱くこれまで観測が困難であった彩層の磁場を世界で初めて持続的に測定します。

口径1mクラスの大型望遠鏡により0.1~0.2 秒角の高い解像度を実現しつつ、高精度の光球・彩層磁場観測を行います。 さらに、彩層の磁場を元に、コロナの磁場を計算により求め、光球-彩層-コロナの3次元的な磁気構造を解明します。

このような解析は、高い空間分解能だけでなく広視野・長時間の連続観測が可能な宇宙からの観測でのみ実現できます。

SUVIT諸元
空間分解能0.1″~0.2″
時間分解能0.1 ~ 1秒(撮像)
1 ~ 20秒(偏光分光)
視野180″×180″
観測波長280~1100nm

EUV/FUV High Throughput Spectroscopic Telescope (EUVST)
紫外線高感度分光望遠鏡


分光観測の輝線強度(活動領域)

EUVST は、太陽の出す輝線を分光することにより、プラズマの速度・温度・密度を求める観測装置です。

今までの紫外線分光装置と比較して、解像度は5倍以上・感度は10倍以上向上しています。 観測波長は10~100nm の紫外線域を幅広くカバーし、多数の輝線で彩層(約1万度)からコロナ(500万度)を切れ目なくとらえることができます。 特に、彩層からコロナへと急激に構造が変化する10万度以上の上層大気の診断能力に優れています。

高感度がもたらす1秒程度の短い露光での分光観測により、磁気構造の激しい時間変化や磁気リコネクションにともなうジェット・光球から伝播する波動を見逃しません。 これまでのコロナ観測の空間分解能は、光球のそれと比べて一桁悪いものでした。 SOLAR-C では、光球からコロナまでの空間分解能をできるだけそろえることにより、SUVIT で観測された磁気構造のどこで加熱が起きているかなどの決定的情報を得ることができます。

EUVST諸元
空間分解能0.28″
時間分解能10秒以下(0.28″サンプル)
1秒(1″サンプル)
視野280″×300″
速度分解能2km/s 以下
観測波長17~21nm, 46~128nm

High Resolution Coronal Imager (HCI)
紫外線高空間分解能撮像望遠鏡

多層膜X線望遠鏡により、0.2~0.3 秒角のこれまでにない高い空間分解能でコロナの広視野・高頻度の撮像観測を行ないます。 EUVST がもたらす詳細な分光情報に対して高品質の画像情報を提供します。 さらに、SUVIT による光球・彩層磁場の観測と組み合わせることで、コロナ加熱や太陽風の加速機構の解明を目指します。

HCI諸元
 HCI
空間分解能~0.2″-0.3″
時間分解能< 10秒
視野400″×400″
観測波長9~21nm