日本の太陽観測衛星

「ひのとり」「ようこう」

日本では1981年に「ひのとり」、1991年に「ようこう」という2機の太陽観測衛星が打ち上げられました。これらの衛星には太陽を主にX線で観測する装置が搭載されており、様々な成果を上げてきました。


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©ISAS/JAXA

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©ISAS/JAXA

フレアをX線で見る

太陽フレアでは、非常に高温のプラズマが生み出されます。100万度以上の温度があると、物質はX線を放射しますので、X線でフレアを観測すれば、フレアでできた高温プラズマの性質を直接調べることができます。

X線観測で世界の先端を歩む

2機の太陽観測衛星は、X線〜γ線領域での太陽観測で世界をリードし、新しい学問を切り拓いてきました
「ようこう」の軟X線望遠鏡は、10年以上にもわたって太陽コロナの変動のようすを連続観測しました。


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軟X線で見た太陽コロナの周期変動
「ようこう」打ち上げ直後(左下)から活動極小期(1995年、右端)まで。(©JAXA/NASA)

「ようこう」の科学的成果

太陽フレアは黒点もあるような活動領域と呼ばれるところで発生します。つまり、磁場が強くて、その形が入り組んでいる所でフレアが起こる――このことから、磁場がフレアのエネルギーの源であることは、「ようこう」が打ち上げられる前から分かっていました。しかし、どのようなメカニズムでそのエネルギーが熱や運動に変換され解放されるのか分かっていませんでした。エネルギーを解放するメカニズムとして考えられた仮説の1つが、磁気リコネクション(再結合)でした。磁気リコネクションとは、反平行の磁力線が接近し、つなぎ替わることで、磁場のエネルギーが熱や運動に短時間で変換される物理過程です。「ようこう」は、フレアが磁気リコネクションによって引き起こされることを観測的に示しました。下の図は「ようこう」がとらえたフレアで、軟X線(X線の中でも波長の長いX線)で輝くコロナループの先端がとがって(カスプ構造と呼ばれる)いることがわかりました。これはフレアの磁気リコネクション説の予言するところとよく合っています。この「ようこう」の観測により、フレアの磁気リコネクション説はほぼ疑いのないものとなりました。しかし、何がきっかけとなって磁気リコネクションが起こるのかは磁場の情報がないと分かりません。したがって、磁場の情報を得ることが次の重要な課題となりました。

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「ようこう」がとらえたフレア(左)と
フレアにおける磁気リコネクション(右)(©ISAS/JAXA)

「ひので」に託された太陽の謎

磁気リコネクションが起こるきっかけが何かを探るには、磁場の情報が必要です。また、磁気リコネクションの詳細に迫る研究では、プラズマの動きも観測する必要があります。磁気リコネクションで磁場のエネルギーが熱やプラズマの運動に変わった結果生じるプラズマの流れをとらえるためです。
また、フレアが発生するメカニズム以外にも、太陽にはまだ分からない謎がたくさんあります。代表的なものが、「コロナ加熱問題」です。太陽の表面(光球)は温度が6000度、その上空の大気であるコロナは100万度です。いったい、コロナはどうやって温められているのでしょうか?
これらの謎に迫るためには、「ようこう」よりも細かい現象が見える、高い空間分解能を持ったX線望遠鏡も必要です。また、地球大気のゆらぎの影響を受けない宇宙から、微細な現象をとらえることのできる、可視光望遠鏡も重要です。
そこで、それらの観測装置を備えた「ひので」を開発し、太陽の謎へのさらなる探求を託すことになったのです。

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