平成25-29年度 科学研究費補助金 基盤研究 (S)
「太陽コロナ・彩層加熱現象に迫る-ひので・IRIS・CLASPからSOLAR-Cへ」

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磁場の測定方法
ー 量子力学的ハンレ効果を利用して磁場を測定します

光球の磁場測定はゼーマン効果を用いて行われていますが、彩層・遷移層の磁場測定は困難でした。 その理由は、彩層・遷移層の磁場は光球より格段に弱く、ゼーマン効果で生じる偏光自体が元々弱い上に、彩層・遷移層は光球に比べ高温で熱運動が激しく、ドップラー運動がゼーマン効果による偏光を掻き消してしまうからです。

しかしハンレ効果(下記参照)であれば、ドップラー運動では掻き消されることもなく、彩層・遷移層の磁場測定に利用できるのではないかと考えられてきました。 そして、近年、このハンレ効果の量子力学的過程の理解が急速に進み、観測した直線偏光から磁場強度を求めることが可能となりつつあります。

量子力学的ハンレ効果の概要

図2. 量子力学的ハンレ効果の概要 (クリックで拡大)
  • step1
    彩層の非等方放射場によって原子偏光(atomic polarization)が生じる。
  • step2
    放射場の対称軸(太陽表面に垂直な軸)から傾いた磁場があれば、その方向に量子化軸 を回転することにより量子状態の混合(atomic coherence)が生じる。
  • step3
    step2 で生じた混合量子状態が磁場によって破壊される(Hanle effect)。
  • step4
    step1, 2, 3 の過程によって決まる原子の量子状態を反映した直線偏光スペクトルが生成される。