平成25-29年度 科学研究費補助金 基盤研究 (S)
「太陽コロナ・彩層加熱現象に迫る-ひので・IRIS・CLASPからSOLAR-Cへ」

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CLASPの光学系

図4: CLASP の光学系

CLASP は望遠鏡(図4の青色光線部分)・ポーラリメーター(緑色光線部分)・モニター光学系(黄色光線部分)の3つのパートから成ります。

カセグレン望遠鏡の主鏡には、ライマンα光は反射しますが、可視光は透過するコーティング(コールドミラーコーティング)が施してあります。 主鏡の後ろには光熱吸収体が配置してあり、これにより主鏡を透過した不要な可視光や熱を取り除きます。

望遠鏡で集められた光はスリット位置で最初の焦点を結びますが、その前にポーラリメーター(入射光の偏光状態を求める装置)の一部である1/2 回転波長板を通ります。 この波長板を回転させることにより、太陽から来た光の直線偏光方向を任意の向きに変えることが出来ます。 次にスリットを通過した光は回折格子で分光されますが、CLASP では少しでも多くの光量を確保するために、分光されたライマンα線の+1次光と-1 次光の両方を使用します。 分光された光は、それぞれオフセット放物面鏡で集光され、偏光解析素子を通って CCD 上に像を結びます。 ブリュースター角を利用した偏光解析素子では入射面に対して垂直方向の偏光のみが取り出せるのですが、CLASP では2つの偏光解析素子が互いに90°傾いて配置してあり、互いに直交した直線偏光成分を同時に測定出来るようになっています。 この偏光解析素子と回転波長板を合わせることで、太陽で生じた任意の偏光方向の直線偏光を検出することが出来ます。

一方、スリットを通過しない光はスリット面で反射し、折り返し鏡・2つのオフセット放物面鏡・ライマンα線用狭帯域フィルタを通ってCCD 上で結像します。 このモニター光学系ではライマンα線の2次元画像が取得でき、データ解析時にはスリットで観測された領域の周りの状況を知るために用いられます。

光学系スペック

項目CLASP の性能
観測波長ライマンα線 (121.6 nm)
観測波長範囲121.1 nm ~ 122.1 nm
観測対象太陽の縁近傍の静穏領域の彩層・遷移層
望遠鏡口径 30 cm カセグレン望遠鏡
分光器球面等間隔回折格子(Al / MgF₂ コーティング)
モニターカメラ観測波長:ライマンα線、視野:550 秒角 × 550 秒角、空間分解能:2.2 秒角
偏光観測Stokes I, Q, U
偏光解析連続回転1/2 波長板による偏光モジュレーションと偏光解析素子を用いた直交2 成分同時測定
空間分解能1.5 秒角(スリット幅)
波長分解能0.01 nm
観測視野1.5 秒角 × 400 秒角
観測時間約5分
集積光子数400 万個以上( 0.005 nm 波長サンプリング、5 分積算、1.5 秒角 × 4.4 秒角積算/ 偏光計測チャンネル )
偏光感度0.1% (2σ)