「ひので」10年の歩み
「ひので」は太陽で起こる爆発や加熱現象を観測し、活動的な宇宙プラズマの振る舞いとその地球への影響を調べることを目的とした人工衛星です。可視光・磁場望遠鏡(SOT)、極端紫外線撮像分光装置(EIS)、X 線望遠鏡(XRT)、という 3 つの望遠鏡で、温度 6000 度の光球から数 100万度のコロナを、同時にしかも高い分解能で観測できます。3 つの望遠鏡は、JAXA 宇宙科学研究所と国立天文台を中心に、日・米・英の国際協力で開発されました。高度 680km の上空から 10年間太陽を観測し続けてきた「ひので」の歩みをご紹介します。
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2006 年 9 月 23 日、「ひので」打ち上げ。 内之浦宇宙空間観測所から M-V ロケットで 打ち上げられました。
2006 年 12 月、「ひので」が初めて観測した巨大フレア。 精密な磁場測定データも得られ、フレア発生メカニズムの 研究が進展しました。
活動領域上空のコロナ。筋上の構造の端から、コロナプラズマが上空に絶えず流れ出ているのが見つかりました。太陽風の吹き出しの様子が初めてとらえられました。
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彩層プラズマがコロナ中に突き出したように見える小規 模ジェット現象、スピキュール。高解像度により、スピ キュールの運動の様子が克明にとらえられました。
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黒点よりもずっと小さく寿命も短い短寿命水平磁場(図の黄 色の部分)が精密な磁場観測によって発見されました。黒点 とは異なる磁場生成機構が働いている可能性が示されました。 (© 国立天文台 /JAXA/SOHO(ESA&NASA))
2011 年 2 月、今 サイクル(第 24 活動周期)で初 めての巨大フレ ア。長く続いた 静穏期から抜け 出し、活動期に 突入しました。
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2012 年 5 月、日本から金環日食が観測されました。「ひ ので」軌道上からは部分日食が観測されました。
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太陽表面とコロナをつなぐ彩層。黒点の周りでプラ ズマ噴出が頻発し、ダイナミックに活動する姿がと らえられました。
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プロミネンス(水平方向にのびる雲のような部分) が上下に波打っていることが分かりました。プロミ ネンスの振動は磁力線に沿って伝わる波がとらえら れたと考えられています。
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EIS がコロナループの根元でプラズマの上昇流を初めて とらえました。コロナ加熱に重要な役割を担うプロセス がコロナ下部に存在する可能性が示されました。(右側 の図は、青が上昇流、赤が下降流を表す(単位:km /s)。)
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静穏領域の上空に浮かぶプロミネンス。「ひの で」により、プロミネンスは静的なものでなく、 激しく動きまわる微細構造を持つことが明らか になりました。
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「ひので」の高解像度観測によって、太陽極域には黒点と 同等の磁場強度を持つ小さな磁極が散在することが明ら かになりました。図は、小さな磁極から伸びる磁力線を 表しています。(© 国立天文台 /JAXA/STEL)
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012 年 1 月、太陽の縁で発生した巨大フレアを EIS で観測。数 100 万度(赤)から 1000 万度以上(ピ ンク)の多温度なプラズマが発生している様子が とらえられました。
2012 年 6 月、 「ひので」の高 い解像度に よって、金星 の太陽面通過 が鮮明に観測されました。
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「ひので」とアメリカの太陽観測衛星 IRIS の共同観測で、プロミネンス振動 のパターンから波動がコロナを加熱す る過程が示されました。
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「ひので」の磁場観測と数値 シミュレーションを組み合 わせることで、黒点形成時 に発生するジェットのメカ ニズムが明らかになりまし た。(© 国 立 天 文 台 /JAXA/LMSAL/NASA)
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2014 年 10 月、太陽に出現した巨大黒点。黒点群全体の面 積は地球約 66 個分となり、今サイクル(第 24 活動周期) で最大であるとともに、約 24 年ぶりの大きさでした。
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2016 年 3 月、太陽南極の磁場分布(青は N 極、赤は S 極)。 「ひので」は南極・北極を継続して観測しており、太陽周 期活動に伴う N 極・S 極の反転をモニターしています。
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