末松 芳法

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3人目の子どもみたいな「ひので」

末松 芳法(国立天文台 准教授)

「ひのでプロジェクト」に 参加したのはいつですか? そのきっかけは

 太陽観測衛星「ようこう」打ち上げ直後の 1992 年頃から、次の太陽衛星は可視光望遠鏡
を(言い出しっぺは平山淳名誉教授)という話があり、地上で可視光観測を行っていた関係もあり、当初より検討に参加していました。最初は口径 80㎝でJSOT と呼んでいましたが、いきなり80cm は大き過ぎる(米国の OSL 計画は 80cm で挫折していた)ということで、50cm に落ち着きましたが、可視光望遠鏡を宇宙に上げて、空気の擾乱に邪魔されず、高分解能で太陽を観測する太陽物理研究者の長年の夢の実現に参加できたことは幸いでした。

「ひのでプロジェクト」の10 年間でいち押しの成果や画像は?

 一 押 し の 成 果 は、 彩 層 ス ピキュールの 2 重構造の発見とそのスピン運動です。これは宇宙での高空間分解能観測ならではの結果です。スピキュールは温度約 1 万度のプラズマが、数十 km /秒の速度で太陽面至る所で噴出しているジェット現象で、未だにその発生機構は謎ですが、2重構造がヒントを与えていると考えています。

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可視光望遠鏡 Ca Ⅱ H 線フィルターで撮影された太陽縁スピキュールの細線化像。左上から右に 5 秒間隔(Y. Suematsu et al., High Resolution Observations of Spicules with Hinode/SOT, ASP Conference Series, Vol. 397, pp.27-30 (2008). より)。

「ひのでプロジェクト」の 10年間で一番印象に残っている出来事や苦労したことは?

 一番印象に残っていることは、軌道上で初めて可視光望遠鏡のトップドアを開放した時です。軌道上での可視光望遠鏡の光学性能を如何に保証するか、開発は紆余曲折があり完成まで長い道のりでした。リアルタイムでのドア展開運用、高分解能像が初めて見えたときの感動は 10 年経っても忘れません。

「ひので」で今後取り組みたいことや期待することは?

 ひのでのデータは生画像でも十分高解像度ですが、超解像手法を用いることで、より小さなスケールでのダイナミクスを明らかにできます。これまで可視光望遠鏡の広帯域フィルターデータにしか適用していませんが、狭帯域フィルターデータや偏光分光データに適用することで、磁気波動やジェットの発生機構解明を期待しています。

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