手塩にかけた X 線望遠鏡
鹿野 良平(国立天文台 准教授)
「ひのでプロジェクト」に参加したのはいつですか?そのきっかけは?
概念設計段階から参加しました。大学院生のとき、課題として取組んでいた「ようこう」軟X 線望遠鏡による解析研究と並行して、当時はまだ主流ではなかった多層膜コーティング鏡による直入射型 X 線望遠鏡の開発に関わったのがきっかけです。
「ひのでプロジェクト」の10 年間でいち押しの成果や画像は?
「ひので」X 線望遠鏡の開発に携わっていたということもあり、低速太陽風の源とも考えられる活動領域外縁部での上昇流の発見(Sakao et al., 2007, Science; Harra et al., 2008, ApJL)がいち押しの成果です。その後、プラズマ中のイオンの組成比を、その場観測による太陽風データとリモートセンシングによる太陽コロナデータとで比較することで、より詳しく対応関係を調べる研究など、研究のさらなる発展のきっかけを作りました。
「ひのでプロジェクト」の 10年間で一番印象に残っている出来事や苦労したことは?
一番印象に残っているのは、やはり打上げです。それまで 10年以上を掛けて開発してきた観測装置ということもありますが、「ひので」が無事に軌道に乗った直後から X 線望遠鏡の先頭温度が上がりだし、データの収集と整理に翻弄されていたためでもあります。その後定常運用に移行するま
で、X 線望遠鏡の運用には悩まされましたが、10 年以上の長きに亘って観測が続けられているのは、うれしい限りです。
「ひので」で今後取り組みたいことや期待することは?
X 線望遠鏡は、1 ~ 1.5 か月に一度、衛星のポインティングを東西南北にずらして広域コロナの撮像を行っています(図)。2 種の X線解析フィルターで取得しているので、高高度コロナの平均的なプラズマ温度を出せる可能性があります。極端紫外線撮像分光装置などの分光観測が得意とする
高精度なプラズマ診断(温度、密度など)とも組合わせ、その温度構造とエネルギー収支を明らかにしていきたいです。
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